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ゲームの達人 4

 彼女は固まって震えたまま動かない。  傭兵はクローゼットにかけてあったあの人のジャケットを外した。  ふわりと彼女にそれをかけ、直接彼女に触れないようにして、抱き抱えた。  彼女が触れられることを恐れていることを知っているようだ。  「小さいなぁ。可愛いなぁ」  彼女を赤ん坊をあやすように揺すりながら傭兵が愛しげに囁いた。    コイツもロリコンか!!    「その子に触るな!!ロリコン野郎!!」  俺は怒鳴った。  背骨がないから身体を起こせない。  「誰がロリコンだ。安心しろ、俺は小さくて可愛いものを愛でるのが好きなだけた。もっとも・・・小さくて可愛いかったから拾った猫は今じゃこの世に2つとないデブ猫になったし、小さくて可愛かったからガキを拾ったら、生意気な男に育っちまって、ソイツは喰っちまったけどな」  ブツブツ傭兵が分からないことを言っていた。    「じゃあな、坊や」  傭兵は片手にランチャー、片手に彼女を抱えて去っていこうとした。    俺は。  俺は。    壁にもたれ動けないままそれをみていた。    嫌だ。  嫌だ。  あの子は俺が守るのに。  連れていかせるなんて嫌だ。  あの子は俺が守るのに。  俺はこんなの認められない。    不死身なのに、女の子一人助けられないなんて。  俺は化け物なんだろ?  化け物になったのに。  俺は戦ったことのある化け物を思い出した。  捕食者「狂犬」。  狂犬は身体の手足がなくなってもそれでも俺を追ってきた。  千切れた手足はそのままで、わずかに残った手足の痕跡と、身体を跳ね上がらせて。  俺を殺す、その執念だけで。  俺は化け物だ。  どういう仕組みか分からないが、背骨がないから立ち上がれないけど、手足は動く。  俺は山刀を握ったままだった。  俺は山刀をふりあげた。  俺は俺の下半身を切り落とした。  このままではバランスが悪くて立ち上がれないからだ。  山刀を咥える。  俺は両腕を使って脚がわりに立ち上がった。  上半身しかない身体は軽く、俺は思った以上に早く動けることに気付く。    そのまま開いたままのドアを飛び出した。  悠々と立ち去ろうとしている傭兵はまだ俺のしていることに気づいていない  俺は両腕を脚がわりにし、跳ねるように駆けた。    ナメるな!!  俺を!!  俺は指一本で身体を持ち上げることも出来る!!  俺は脚だけじゃない!!  俺は両腕で跳ねた。  身体は男の肩まで跳ね上がった。  俺は宙で咥えていた山刀を右手に握り、男に向かって振り下ろした。  肩から思い切り斬り込んだはずなのに、刀は肩で跳ね返った。   コイツ、下に防刃のなにかを着込んで・・・。  傭兵はそれでも、膝はついた。  片腕で着地した俺は、それでも、もう一度攻撃しようと、片腕で跳ねた。  その俺の頭や身体に銃弾が撃ち込まれる。    膝をついた姿勢のまま、片手に銃を握った傭兵が彼女を抱きしめたまま俺に向かって銃を向けているのか見えた。  ランチャーを放り出し、銃を抜いたのだ。  脳に銃弾がめり込み、さすがに意識が遠のく。  「・・・アブねーな。この状態でも動けるのか・・・」  意識が消えるその寸前、ため息が聞こえた。  そうか。  コイツが化け物相手にするのに用心してないわけがない。  俺は、コイツの剥き出しの首をはねるべきだったんだ。    ・・・俺は、確かに・・・素人だ。  彼女を。  彼女を。     助けられなかった・・・。  ごめん・・・。  スーツ・・・。

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