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ゲームの達人5

 僕は自分が見ているものが信じられなかった。  僕のマンションが燃えていた。  今はほぼ鎮火してはいるが。  おまけに、僕の部屋だった場所には穴が開いているのがみえた。    犬も包帯だらけの姿のまま、僕の隣りで呆然としていた。  報告は受けていた。  だが実際見ると、これは・・・くるものがある。  ガキ。  僕のガキ。  アイツらまた攫いやがった。  爆発音、それからの火事。  住人達が逃げ惑う中、犬の女とガキを連れて逃げやがった。  犬の手配していた役立たずの警備は全員殺されていた。  どうして、僕の家がわかった?  僕の家のことは情報屋は知らない。  どうやって逃げた?    「GPSは?」  僕は犬に尋ねる。  ガキの身体には埋め込んである。  万が一ガキが僕から逃げた時のためにしこんおいたヤツだ。  「部屋の前に身体からえぐり出されて捨ててあったらしい」  犬が部下からの電話の内容を答える。  「・・・なるほど」  頭にあがりそうになる血を必死で抑える。  ああ、やっぱり一般人を巻き込んででも殺しておくべきだった。    まさか、逃げられたそのすぐ後に反撃してくるとは思わなかった。  追っている立場だと言う驕りがあった。  追う?追われる?  この世界にそんなものなどないことを忘れていた。  最後の最後、息の根止めるその瞬間まで、どちらが有利だとかそんなものはないのだってことを。  僕としたことが・・・。    ガキの首がはねられなかったことだけか幸いだった。  殺せたのに殺さなかったのか。  ・・・何を考えている?  僕の部屋。  ガキと僕の部屋。  吹き飛ばされた。  国に飼われることを決めた理由の一つに自分の家が欲しかったというのはある。  ずっと転々と暮らしてきた。  寝るところはあっても、家なんかなかった。  豪華なホテルより、一度どこかに住んでみたかった。  家ってヤツが欲しかった。  国に飼われたなら追う立場になる。  転々としなくてよくなる、家にすめる。  そう思った。  でも、実際住んでみても、思っていたのとは何かちがってて。  豪華な家具とか、本棚いっぱいの本とか。  高音質のステレオとか。  殺しに来るヤツに用心しなくていい寝室とか。  それは悪くなかったけれど、でも何かが違ってた。  それが何か分からなかった。  でも、ガキを連れてきたら、その何かが埋まった。  僕は、暮らしたかったんだずっと。    「    」と。  それは言えない言葉だ     詐欺師をナメてた。  素人だとナメてた。  自分では手を汚さない、ふぬけたヤツだと。    詐欺師はぬるくない。  やられた分をしっかり取り返しに来やがった。  こちらの住処を詐欺師はとっくに知っていたのだ。  どうやってかは分からないが。  しかも傭兵だけよこして。  おそらく自分はどこかで今ごろ情報屋相手に楽しんでいるはずだ。  相変わらず、自分では何もしない。  詐欺師が頑張ったのは情報屋を取り戻した時だけだ。  ガキの話ではここまで頑張る傭兵も、詐欺師に騙されているだけだそうだ。  死んだ恋人を生き返らせるためだけに詐欺師に協力していると。  全く持ってふざけたヤツだ。    泳がしていたつもりが、こちらが泳がされている可能性も出てきた。  僕が詐欺師をナメていたことは間違いない。  この僕を出し抜きやがった。  この僕を。  詐欺師のヤツ。  おまえは確かに大したヤツだよ。  「・・・犬、ガキと女を取り戻しに行くぞ!!」  僕は犬に言った。  犬はすごい形相で燃やされたマンションを、自分の女がいた部屋を見ていた。  あまり感情を出さない顔が憤怒に歪んでいた。  犬は牙を剥いていた。  今の犬は飼い犬じゃない。  ・・・コイツは国の飼い犬だとばかり思っていたが、違った。  コイツ、あの女の、あの女だけの、飼い犬だ。  「殺す」  そう言ったのは犬で、僕ももちろん同意見だった。  こんなことはめったにない。  

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