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滅ぼされるべきもの 2

  本部に着いた。  近代的な美しい美術館を思わせる建築物を高い塀が取り囲んでいる。  良くみればおびただしい防犯カメラがそれとはわからぬように取り付けられていた。  近隣の住人を刺激しないためか、教団服ではない私服の信者達が門の前に立ち、見張っている。  教団の教えの小冊子を持っているで、警護や監視などではないように見せかけているが、不自然なズボンのポケットの膨らみは何かしらを忍ばせているのは明白だ  スタンガンか?  スプレーか?    私は車を止め、男に尋ねる。  「どうするつもりだ。ここは色々あって勝手に手出しはできない」  私は男に告げた。  今の代表である教祖の娘は実に権力にうまく取り入っている。  危険ではないことをアピールし、何より、信者から巻き上げた沢山の金を権力に流すことによって、そこ地位を盤石にしている。  男は捕食者を殺すための全ての権限を与えられてはいるが、まだここと捕食者の現在の繋がりもわからないのに、勝手に何かをしでかすわけにはいかない。  「・・・詐欺師の狙いはここだよ」  男は笑った。  そしてさっさとドアをあけ、車をおりてしまう。  私は慌てた。  男は堂々と門へ向かう。  慌てて私はその場に車を止め、後を追う。  男は大きな門の前に立った。  鉄の門がそびえ立つ。  中からのチェックかなければあかないのだろう。  開けば、車がゆうに一台は通れるくらいの大きな門だ。  門の前に立っていた信者は当然、男を見咎めた。  「どのようなご用件ですか?」  柔らかに尋ねる。  身体も大きく、何かしら格闘技等の訓練をうけたことのあるものの動きだ。  後からやってくる私をみて顔色をかえる。  確かに私は男よりははるかに大きい。  肉体的な威圧感もあるだろう。  だが間違いだ。    恐ろしいのは今、お前の目の前にいる男だ。   男は自分より大きなその信者を、馬鹿にしたような顔で見上げた。  そして上から下まで下品に見回し、鼻の先で笑った。  これほどまでに人を馬鹿にした態度はないといったような態度だった。  私は信者の理性に感心した。  「お約束があるのでしょうか」  柔らかに男に質問しただけだったからだ。    相当強く上から揉めないように言われているのだろう。  ただ、その目の奥に怒りはあったが。    「ないね」  男はにやっと笑った。   信者はムッとしたまま男の行くてに立ちふさがる。    それは瞬間だった。  男は手の平の付け根。  掌底と呼ばれる部分で信者の顎を下から突き上げた。  それほどの力はない。  だが、信者の頭は大きくのけぞり揺れた。  脳を急激に揺らされ、信者は簡単に意識を失い崩れこんだ。    男は躊躇なく信者を踏みつけ目指す門まで、悠々と歩いた。    それでもそこにあるのは大きな鉄の門だ。  だが、そんなものでは男を止めることなどできない。  男は右手を前に突き出した。  右手はチョコレートがとろけるようにやわらくとろけて、その形を失っていく。  そして、銀色に変色しジェルのように伸びて固まり、刀になった。    男はすっかり機嫌が良くなっていた。  暴力の匂いがが男は大好きだからだ。    男は鉄の門へむかって刀を何度か斬りつけた。  鉄の門はまるでゼリーのように男の刀を受け入れた。    そして男は足で、切り込んだ部分を蹴った。  バタン  ゼリーのようにくり抜かれたのに、その倒れた音には重い質量と硬さがあった。  鉄の扉がちょうど人一人通れる位に切り抜かれ、その部分が地面へと倒れた。  切り抜かれた部分から、建物の地下の駐車場へ向かうスロープが見えた。  男は振り返りもせずに自ら開けた穴をくぐって行った。  私は男を追いかけながら、ムダとは思いながらも言った。  「マズい。まだ詐欺師がここをどうするかも分かっていないのに勝手に動くのは・・・ここの代表は国の偉いさん達とも懇意だ」  私は男を止めるべく努力はしてみる。    「そんなことは僕の知ったことではない」  男はまあ予想通りにこたえる。  「大丈夫だ犬。悪者以外は殺さないよ。それに切ったり、剥がしたり、抜いたりもしない。せいぜい、折るくらいだ」  男は歯をむき出して笑った。  男は暴れる気は十分だった。  頭を抱える。  だが、この男を私に止めれるはずなどなく。  それにこの男は無目的にこういった行動をとるはずもなく。  私の存在は、男のしでかす全ての責任を押し付けられるためにある以上、諦めるしかなかった。  私の存在は男がした全ての罪の責任をとるためにある。  殺し傷つけた人々、壊し破壊した物全ての責任をとるためだけに私は存在している。  万が一、男の存在が発覚し、誰かがその責任を撮らなければならない時のためだけに私は存在している。  その為の捨て駒。  その為の汚れ仕事の責任者。  それが私だ。  ため息をつきながら、男の後をついていく。        

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