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渇望 4

 「誰もお前を支配できない。オレもだ。オレはお前と一緒いてやれるだけだ。一緒にいてやる。・・・そして、一緒に消えてやる」  オレは愛の言葉の代わりに囁いた。  愛してるとはいえない。  でも、オレはお前を選べる。    選んだんだ。  それは愛しているのと同じ位の意味があると・・・思ってくれないか?  オレをやる。  オレをやるから。  嘘つきの目が涙の中で瞬いた。  焼き尽くすような視線にオレは焼かれた。    誰かに本気で求められたいと思ったことはないか?  オレはある。  何度もある。  不幸ではなかった。  思っているのとは違ったけれど愛は確かにあった。  恋人ではなかっただけだ。  全てを与えられないことに諦める毎日の中で、思ったことはある。  オレを求める誰かがいてくれたらと。  そしてオレは求められた。    全身で、何もかもを投げ出すかのように欲しがられた。  身体の奥まで明け渡された。  激しく突いた。  もう理性なんてない。  思うまま突いた。  嘘つきは泣きながら声をあげた。  与えられた刺激に狂ったように感じる。   どうなってんだ、ここ、蠢いてしぼられて・・・。  気持ちいい。  気持ちいい。  可愛い。可愛い。    お前可愛いよ。  叫んでいたんだと思う。     嘘つきの奥へ、さらに奥を味わう。  こじ開けて入る。  そこでぐぽぐぽと吸い付かれ、その感触のたまらなさにオレは呻く。  こんなに気持ち良い場所があるのか。  ここにいるのは、受入れてくれたからだ。  お前がオレを受け入れてくれたからだ。  嘘つきは身体を弛緩させて、もうひくつくだけだ。    洩れる声か、小さくかすれて意識がほとんどないのがわかる。    トンでるのか。  可愛い。   可愛い。  「も、ダメ・・・」  オレは一番奥に放った。  声が出た。    快楽と同じ位オレを満たしたのは、充足感だった。    求められ、受け入れられること。  それは信じ委ねることだった。  嘘でしか出来ていないはずの男は、オレを信じた。   人を騙すことしか知らない男がオレを信じた。  その事実がたまらなくオレをいかせた。    嘘つきは声を出さず、喉をそらせ身体を震わせてイった。    「・・・オレの童貞貰ってくれたな」  オレは言った。  そんなもんには意味はない。  でも、お前としかもうしない。   このオレが。  それには意味があるだろ。    「・・・ホント、可愛すぎ」  オレはぼんやりと開いたままの嘘つきの唇を貪った。  もう、何の反応もないことさえ愛しかった。  これはオレの男だ。  オレだけの男だ。  可愛い、可愛いオレの恋人。  オレは嘘と闇でできた男を手に入れた。  オレはコイツを抱きしめて。  オレはコイツを封じ込める。  オレと一緒に。  オレは全てを手放す。    コイツ以外の全てを。  アイツもあの子も、それなりに楽しんでいたこの世界も、それでも愛していたクソな母親も、こんなオレでも親しくしてくれた友人達もぜんぶ捨てて。  それは犠牲だった。    少なくとも最初はそういう意図はあった。    あの子と少年を救う為の。  まあ、アイツの為の。  まあ、人類の為の?  今は違う。  コイツが欲しい。  本当に欲しい。    欲しがられたから。  身も蓋もなく、子供みたいに欲しがられたから。  際限なく求められ許されたから。  そんなことが。  そんなもんが。  全てだった。  目をさました嘘つきは戸惑った顔をしていた。  自分に何がおこったのかわからないといった顔だ。  やっぱり可愛いコイツ。   オレは笑ってしまう。  寝顔をずっとみていたことは教えてやらない。  見下ろしてるオレに気づいて、嘘つきは本当に嬉しそうに笑った。  そんなに嬉しい?  オレが目覚めた時にいることが。    何コレ、可愛すぎ。  オレは可愛すぎて悶えそうになった。  「・・・なあ、これからもたまにはオレにサせて?」  オレは囁いた。  してみたら、挿れるのもスゴイ良かった。  コイツに挿れたい。  オレは結局一回しか挿ってないわけで。    まあ、気絶したコイツの身体でちょっと色々したけどね。  擦ったり、挟んだりして出したけど、中で出したのは一回だけだったわけで。   綺麗な身体のあちこちにふっかけた。  この綺麗な顔を汚すのはゾクゾクした。  オレのとアイツので汚れてしまった身体は綺麗に拭いてやった。  まだコイツにしたいことはいっぱいあった。   口や喉の犯し方のレパートリーも教えてやりたいし、挿れるだけで何時間も動かないセックスとかもしたかったし。  オレ、挿れる方でも全然いける。  オレはアイツで楽しむことを考えてニヤついた。   しかし、嘘つきもオレを見て笑ったので、オレは何故か凍りついた。   何、その笑顔。  可愛いくない、その笑顔。  何?  オレ寒気がしちゃった。    嘘つきは舌なめずりしながら起き上がった。  えと。  オレに抱きつぶされた可愛い男はそこにいなかった。  嘘つきはオレの身体をひっくり返した。    あれ?  オレは思った。    尻を広げられたのがわかる。  ゾクリとした熱い感触がした。  ピチャリピチャリという音も。    嘘つきがオレの穴を舐めていた。  襞を伸ばすように丁寧に、執拗に。  「・・・あっ」  オレは呻いてしまった。  舌でつつかれる。   また舐められる。  その感触に腰が蠢く。  「ふうっ・・・」      オレは身体をふるわせる。      オレは悟った。  嘘つきは・・・。  オレに教えられたことを実践しているのだ。  いや、オレが教えた以上にそこで舌はいやらしく動き始めた。    時折、尻に歯をたてられ甘く噛まれる。   穴は執拗に責められる。  責められるのに、舐めるだけなのに、挿れてもらえないのに。  つつかれるだけなのに。  穴を開くように、でも開かない舌の感触がたまらない。  オレは震えた。  音をたてて吸うことはオレは教えてな・・・。    「ああっ!!」  オレは叫んでしまった。  ボタボタと勃ち上がったオレのそこから汁がこぼれていく。  オレはシーツをつかみ耐えながらながら後悔した。  オレは、オレは余計なことを教えてしまったのだ。  そうでなくても、嘘つきに散々泣かされていたのに。  嘘つきにオレはガチでいやらしいことを教えてしまった。  嘘つきはオレに教えられたことにさらにバリエーションを加えてオレで実践するつもりだ。    それはつまり・・・。  オレは真っ青になった。  自分のサディスティックな面に酔いしれた昨夜を思った。  ごめんなさい。    そういう思った。  「・・・許して」      そう言ってもみた。  返事の代わりにねっとりと会陰をなめられ、オレは震えた。  性器には触れて貰えないことを意味していた。  それでもオレはイかされるだろう。   グズグズになるまで、穴だけを舐められて。  オレは自分が食い尽くされることを悟った。  自業自得。  因果応報。  オレは嘘つきの舌に声をあげながらその意味を本当に知ることになった。

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