164 / 275
祭が始まるまで 1
「どうして欲しい?言ってみて?」
あの人が甘く言う。
さっきから、乳首しか弄ってくれない。
コリッ
歯かしごくようにそこで動く。
「・・・あっ・・・お願い・・・お願い」
俺は耐えられなくて叫ぶ。
甘く噛まれるのが気持ちよくて、勃った先から零れてしまうけど、前を触ってはくれない。
この人は前はあまり触らない。
後ろでイかせるのが好きなのだ。
乳首を弄られるのは気持ちいい。
でも、確かにそこだけで俺はもうイったけれど、そこじゃないトコでイきたい。
あの人はまだ、俺の穴に触ってもくれない。
そこはずっとひくついている。
欲しくて。
あの人が欲しくて。
「言ってみて?上手におねだりできたらしてあげる」
あの人に優しく囁かれた。
「おちんち・・んを俺の恥ずかしい穴に挿れて・・・いっぱい動かして下・・さい」
俺は恥ずかしいセリフを泣きながら云う。
こう言わない限り、絶対に挿れてくれないからだ。
「なんで、挿れて欲しいの?」
あの人はそれでも、乳首をねっとり舐めながら意地悪を言う。
自分の指でもいいから挿れたいのだけど、それはあの人に禁じられて、俺の手はあの人の背中にまわすように言われている。
耐えられなくて何度も爪を立ててしまったのに、あの人はそうしろという。
俺が傷つける背中がうれしいから、と。
「・・・俺が雌だから。・・・俺の後ろは雌穴だから。ぐほぐぽされたい・・・あんたのでめちゃくちゃにされたい」
俺は泣きながら言う。
何でも言う。
あの人は昨夜俺に抱かれてしまったから意地悪になって、ここまで言わせてくる。
悔しいことに一度身体に火のついた俺はあの人にしてもらえるためなら何でも言う。
前からいやらしいことは言わせたがるとこはあったけど。
挿れさせてもらえないなら、挿れてもらって心ゆくまで突いてもらうしか身体を鎮めることはできない。
「・・・やらしい。可愛い」
あの人は嬉しそうに俺を抱き締めた。
俺はそれは嬉しかったけど、もう欲しくてたまらないから、つらくて泣き始める。
「自分でほぐして。見ててあげるから」
あの人は言った。
あの人の身体が離れるのが嫌で一瞬抱き締めた。
「いらないの?」
そう言われたら大人しくあの人の身体を離すしかなかった。
挿れて欲しい。
これじゃ足りない。
イきたい。
あの人に穴を広げてさらす。
ここに欲しい。
欲しくて。
欲しくて。
「挿れ・・・て!!」
俺は叫んだ。
あの人が唾を飲み込む音がした。
「可愛すぎるでしょ・・・」
あの人はため息をつきながら言った。
脚を広げた俺の上にあの人はのしかかってきた。
俺は期待に胸を高鳴らせる。
シーツを掴んで侵入にそなえた。
熱くて硬いモノが塗れきった穴の上に擦り付けられる。
俺は自分からも腰を押し付ける。
これ。
これが欲しい。
気持ち良くなりたい。
中を擦って欲しい。
奥を突いて欲しい。
「・・・早・・・く」
俺はかすれた声であの人に強請る。
あの人の綺麗な顔を見上げる。
ああ、綺麗だ。
豹のようにしなやかで、危険で。
目の奥に欲望を湛えて、綺麗な唇を歪ませて。
俺を喰らい尽くそうとしてる。
そんなあんたはとても綺麗だ。
でも、あの人は嫌な笑い方をした。
この笑顔は要注意なのはもうわかっている。
俺を酷く苛める時の顔だ。
「これ、好き?」
あの人はそれを穴に押し付けた。
挿れて欲しくて俺は頷く。
何度も何度も。
「じゃあもう、後ろだけでいいよね。お前、後ろの穴だけで気持ちよくなれるんだがら、僕のを後ろに挿れるだけで良くない?」
軽く押し込まれ、回される。
少し入り口を開かれただけのそれでさえ、じれきった身体にはたまらなくて声を上げる。
「ねぇ・・・言って?・・・もう僕の穴になるだけでいいって」
優しくあの人は囁いた。
あの人は俺に抱かれてしまったのが何か色々と難しい気持ちになるらしく、ずっとこんな感じで俺に意地悪をする。
俺があの人に挿れるのを諦めさせたいのだ。
「気持ち良くしてあげる。入り口の辺で出し入れしてあげるし、良いとこもコレでいくらでも擦ってあげる。気を失うまで奥を突いてあげる」
あの人の声は甘い。
欲しかった。
めちゃくちゃそれが欲しかった。
穴に浅く嵌まったそれを深く沈めようと腰を押し付ける。
でも、意地悪くかわされる。
「ね?・・・いいよね?そう言ったら挿れてあげる」
あの人の声はどこまでも甘く、指が弄られ続けて腫れ上がった乳首を摘まむ。
その刺激に声が出る。
「言って?・・・もう後ろだけでいいって。僕に後ろで気持ち良くされるのが好きだから、もう後ろでしかしないって」
甘く囁かれ、首筋を吸われる。
「もちろん、口にはこれからも挿れてあげるからね。喉まで突っ込まれてそこで無理やりされるの大好きだもんね」
あの人は指で口の中をかき混ぜた。
それにまた前から溢れさせてしまう。
俺は別に喉まで犯されるのは好きじゃない。
呼吸できないし、えずくし、むせるし。
でも、あの人が俺のそんなとこまで欲しがっていると思うのは嬉しい。
だから、口を開き、頭を押さえつけられることに耐える。
苦痛だ。
でもその苦痛は甘い。
口ですること自体は好きだ。
この人が気持ちよくなってる顔を見るのは好きだし、口の中を擦られるのは気持ち良かったりする。
舌や指で散々快楽を教えられたら口の中は確かにもう感じる場所にされてしまっている。
その口の中を指でゆっくりなぞられる。
歯茎をたどり、口蓋を擦られる。
その指を夢中でしゃぶる。
あの人のアレをなめる時みたいに。
舌を絡め、吸う。
欲しい。
あの人のが欲しい。
「僕のチンポ欲しいでしょ?」
耳の裏をくすぐりながらあの人が言う。
「欲しい。欲しい・・・」
俺は泣きながらいう。
身体を擦り付け、せめてキスでもしてもらおうと唇を近づけるが、あの人の手に遮られる。
「だめ・・・」
あの人は甘く言う。
その声は甘い。
甘やかす時の声だ。
「ね?言ってよ。もう僕に挿れるのは諦めて、僕に突っ込んで貰う方がいいって」
耳を噛まれた。
俺は辛くて辛くて泣く。
子供のように泣きじゃくる。
「やだ・・・やだ・・・」
僕は叫ぶ。
叫ばなければ、そう言ってしまいそうなほどにあの人を欲しがっていたからだ。
「・・・なんでそんな意地はるの。いいんだよ?頭がおかしくなるまで追い詰めても」
あの人はそう言いながら実行する。
もう何度も溢れさせている俺の性器の付け根を握り込まれた。
射精させないためだ。
あの人の身体がずり下がり頭が脚の間に来る。
俺は何をされるのかを知って怯える。
射精できない状態でそれはされたくなかった。
あの人の綺麗な唇か開き、赤い舌が見えた。
俺の脚の間からあの人はいやらしく笑った。
「ここ舐められるの好きでしょ?」
あの人の言葉にふるえた。
射精もできないでここまで焦がれた身体にそんなことされたら・・・。
熱く濡れた舌がそこを舐めはじめた時、俺が叫んだのは苦痛よりもタチのわるい快感からだった。
出口のない快楽が俺を追い詰めていく。
「気持ち・・い・い、嫌・・出したい・・・イきた・・・や・・」
俺は何を言っているのかもうわからない。
ぺちゃぺちゃそこを舐める音さえ脳を焼く。
舌がそこで動くたびに快楽が全身にしみとおる。
だけどそれは出口がない。
溜まるばかりの快楽に焼き尽くされる。
「お願い・・・お願い・・・」
俺は叫ぶ。
許して欲しかった。
射精させてほしかった。
もう挿れて中でイかせて欲しかった。
「・・・僕を抱くのは諦める?」
優しくあの人が言う。
そこで舌を動かしながら。
「嫌だ!!」
俺は叫ぶ。
身体をひくつかせながら。
「・・・こんなになってるくせに、なんでそこにこだわるわけ?」
呆れたようにあの人が言う。
「あんたが嫌がるなら絶対にしないのに、なんであんたもそう言わせたがるんだよ!!俺はあんたが嫌なことは絶対しない!!」
俺は怒る。
嫌なら嫌だと言えば俺はしない。
あの人がいいと言ってくれるまで待つ。
無理やりとか絶対しないのに。
「それともそんなに俺に抱かれるの嫌だったの?」
俺は悲しくなってしまった。
俺にはわすれられない記憶だ。
俺の腕の中の可愛いあの人。
俺以外には見せたことのない顔を沢山見せてくれたあの人とのあの時間が、この人には嫌な思い出でしかないのだろうか。
悲しくて泣けてくる。
ともだちにシェアしよう!