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祭が始まるまで 10

 「僕が殺したヤツらに謝らなくてもいい。・・・もし、僕を殺せる方法が見つかって、僕を殺すべきだとお前が思ったならお前が僕を殺せ」  僕はガキにささやいた。  僕はお前のために正義の味方をやっているが、僕は間違うかもしれない。  それも大きく間違うかもしれない。  僕は殺すのが大好きだし、人間には思い入れが全くないからだ。  もし不死身の僕を殺す方法が、捕食者以外で僕を殺せる方法があるのなら、それが見つかったなら。  お前が望むのなら、殺されてやるから。  「だから・・・お前が連中に謝らなくていい。その時はお前が正義の味方になれ・・・お前にならいい」  僕はガキに囁いた。  可愛い。     可愛い。  お前になら殺されてやっていい。  そんな方法かあるのなら。  「連中はお前に感謝する。だからいい。お前がソイツらに謝るな」  僕は囁いた。  ガキの罪悪感を取り除くために。  ガキは許されないことに苦しむ必要などない。  最後すべてをガキが清算すればいい。  僕はガキが望むなら受け入れる。  いずれ、僕達を殺す方法も見つかるだろう。  どれほどの長い時の果てかは知らないけれど。  「お前になら殺されてもいい」  僕は心の底から言った。  むしろガキに殺されるのはたまらなくいいはずだ。    最高の死に方じゃないか。  それは天国でさえあるかもしれない。  僕の腕の中でガキの身体が震えた。  立て続けにイった時みたいに。  食い込んでいた歯が抜かれた。  イかせまくった後みたいに身体の力がフニャリと抜けた。  思わず顔を覗き込む。  ガキがぼんやりして僕を見る。  これもその後みたいな顔だな。    「  」  僕はガキの名前を呼んだ。  ガキを呼び戻すために。    「・・・あんたなの?」  ガキがぼんやり呟いた。  ぐったりと身体を預けられた。  ・・・洗脳がとけたのか。  何故?  いや、今はいいそんなことはどうでもいい。  僕はガキを抱きしめた。  僕のガキ。  「  !!」  その名前を叫んだ。  僕は取り戻した。  取り戻したんだ。  僕は泣いていたかもしれない。  舌打ちの音がした。  そしてドアをたたきつけ閉める音が。  詐欺師のヤツだ。      楽しんで見ていたのだろう。  殺し合う恋人同士、見ないわけにはいかない出し物だよね。  気持ちはわかるが許さない。  お前だけは許さない。  ガキをそっと横たえる。  「ちょっと待ってろ」   ついでにガキに斬られた耳も拾ってつけておく。  僕は刀に変えた右手のまま、詐欺師が締めたドアへと向かった。  「うん」  ガキは素直に頷いた。  ぼんやりしているが、大丈夫そうだ。  手足を千切られ、まあ千切ったの僕だけど、痛いだろうが少し待ってもらおう。    「ガキを確保した。いまから室内に突入する。建物の外から監視しろ」  僕は犬に言う。  僕には無線機が取り付けられている。   僕の家の中以外は僕ほ言葉はすべてチェックされている。  というわけで僕の恥ずかしいセリフを犬に聞かれたわけだ。  まあ、いずれ犬は事故にみせかけて殺すから。  殺すから!!  さあ、詐欺師、お前を守ってくれる傭兵もいない、洗脳し使っていたガキも僕は取り戻した。  戦えないお前はどうするの?  僕はガキを可愛いがって楽しむ前に、詐欺師で少しばかり楽しむことに決めた。  詐欺師は可愛がらない。  とことん痛めつけて楽しむ。  本格化に楽しむのは連れて帰ってからだが、詐欺師にここでも少しばかり思い知ってもらわないと納得がいかない。  僕の唇が知らないうちに歪む。  嬉しすぎて。  詐欺師、今までのすべてを泣いて後悔させてやる。  ドアを刀で切り裂きあけた僕の目の前に広がっていた光景に僕は絶句した。  窓の外にあるテラスに詐欺師は情報屋と並んで立っていた。  バスローブしか着ていないにも関わらず、詐欺師はいい男だった。  恋人がいるからしないけど、前までの僕なら喜んで犯していただろう。   僕は拷問は大好きだけど、セックスは無理やりとかは嫌いで、泣かれたりすると萎える方。  (ガキは別。  なけば泣くほど可愛いから。)  だから死体にしてから楽しむか、楽しんでから拷問するかなんだけど、ここまでコケにされたなら、拷問しながら犯したと思う。  もうセックスを楽しむ気なんかおこるはずがない。  楽しむのはソイツの恐怖だけでいい。  なんなら、情報屋を詐欺師の前で拷問しながら犯しても良かっただろう。  そうすれば詐欺師が苦しむと思えば勃ちそうだ。  だが。  それはしない。  僕には可愛い恋人がいるからね。  だが。  拷問はする。  詐欺師は刻む。    僕は右手を刀から銃へ変えていた。  この距離からは外さない。  今回は楽だ。  普段なら頭を狙って撃つが狙うのは腹でいい。  すぐに殺さない。  僕の能力。    僕の銃が撃ったものは直径50センチの球状の範囲が消し去られる、だ。  胴体を消して頭と下半身で気が済むまで拷問してやる。  僕のの代わりに割れたビール瓶を穴に突っ込んでやる。  だが、僕は近づいてそれに気付いた。  情報屋が震える目で見ているそれ。  僕は絶句した。    椅子に縛られた少女と、少女の前に置かれた明らかに爆発物である機械。  いや、少女じゃない、犬の女だ。  そして詐欺師の片方しかない腕にあるのはあきらかに起爆スイッチだった。  僕が絶句したのはその爆発物がおまりにも大きく、おそらく、この上下のフロアまで吹き飛ばすようなものだったからた。    詐欺師は面白そうに僕を見ていた。    僕が自分を撃つならこの起爆装着を発動させると言っているのだ。    犬の女がどうなろうとそれほど気にはしてなかったが、ガキが泣くと思った。  それにこのフロアが吹き飛べば被害は犬の女だけの問題ではなくなる。  上の階にいる犬が死ぬのはとてもいい。  ・・・だが、ここでフロアを吹き飛ばしてでも詐欺師を確保しておく方が千人近い人間を殺すつもりの詐欺師の計画よりかは人数がすくなくなる。  その方がいいんじゃないか?     犬も女も沢山の客も死ぬし、建物が吹き飛ぶ破片て死ぬ者もいるか1000人にもならない。  せいぜい100人から200人以内にはおさまるだろう怪我人もいれて。  逆を言えばそれだけの被害で終わらせられる。   その方が良いのではないか?  僕は悩んだ。  だが、爆発の時の何かでガキの頭が胴体から引きちぎられる可能性を考えた。    ガキが死ぬ可能性だけは避ける。  仕方ない。    僕は歯噛みしながら詐欺師起爆装置のスイッチを入れるより速く爆発物らしきモノを銃で撃った。       爆破装置はかきけすように消え去った。    ・・・これで10分は銃は使えない。  捕食者を殺せる僕の唯一の武器は封じ込められた。  詐欺師はそれを狙っていたのだ。  だが、僕は右手を今度派刀に変えた。   だが刀はあるんだ。  殺せなくても、おまえをバラバラには出来る。    僕はテラスへ向かう。  ここは23階だ。  どうやって逃げるつもりだ?  この僕から。    空でも飛ぶか?  詐欺師はニコニコと笑っている。  情報屋は震えているのに。  それが無性にムカついた。  情報屋は知っている僕がガキに抱かれた情報屋を許すつもりなどないことはわかっているのだ。  詐欺師はあざ笑うように僕を見た。  能力がなければ人一人殺せない生き物のくせに。    コイツ、今まで狩ってきた捕食者の中で一番ムカつく。  もう犯してやろうか。  ダメだガキが怒る。    まだ何かあるのかもしれないそう思えば用心してしまう。  だが近づく。  僕がテラスに足を踏み入れた瞬間、ひょいと詐欺師は情報屋を腕一本で担ぎ上げた。  思いの外の力強さだった。  「嫌だ。オレは嫌だ!!」  情報屋が泣き叫んだ。  詐欺師はさらに面白そうに笑った。  そして、ひょいとまるで庭の塀でも乗り越えるように、テラスのフェンスを乗り越えた。  馬鹿な・・・ここは23階・・・。  確かに死なないが、外には犬の部下達が見張っているし、この高さから潰れたならそうそう回復はしないぞ!!  それとも何かあるのか!!  僕は慌ててフェンスに駆け寄り下を見下ろす。  やはり。  フェンスにはワイヤーがくくりつけられてあった。  細いから一見、見えにくい。  詐欺師は情報屋を肩に抱えたままワイヤーに吊り下げられていた。  腰にまかれたベルトにつけられた装置がそこそこの速度で下へと詐欺師を下へと下ろしていく。  高いところが苦手なのか、情報屋が泣き叫んでいる。  もう10階位にまではおりている。  馬鹿か。  ホテルの外にはスーツの部下達を配置している。    戦えないお前たちなどすぐに捕まる。  「テラスからワイヤーを伝って下へ逃げようとしている確保しろ」  僕は聞いているはずの犬に言った。  「後、おまえの女は無事だ。先に詐欺師達を確保してからむかえにこい」   僕は言った。  つまらない幕切れだったな。  まあ、詐欺師にこれからすることを考えたなら心が浮き立つし、それより先にガキと早くしたくてたまらない。  とりあえずガキを可愛がる。  詐欺師は後回しだ。    おまえ達はカエルみたいに潰れて僕を待て。  僕はフェンスに結びつけられたワイヤーをに刀の刃を当てた。  情報屋はそんな僕を担がれながら見た。  「止めろ!!切るな!!」  情報屋が叫んだ。  切るでしょ。  絶対。  下は歩道だ。  アスファルトにたたきつけられて潰れてしまえ。  僕は迷わずワイヤーを切った。    残念ながら詐欺師も情報屋もアスファルトの上でつぶれはしなかった。  ホテルに納入にきたパン屋のトラックの上にふたりは落ちた。  この高さから落ちたので、荷台の鮮やかな色でパン屋の名前を書いたコンテナを突き破ってしまった。  これではコンテナの中で潰れているだろう。  僕はそれを想像して笑ってしまった。  それはなんとぶざまで笑える光景だろう。  それに胸のつかえも少しはとれる。  中にあったパンは食べられないだろう。    「パン屋のトラックの荷台に落ちた。回収しろ。しっかり拘束して詐欺師は僕のお楽しみの部屋に監禁しておけ。女は廊下に出しておくからとりにこい。しばらくこの部屋には誰にも入れるなよ・・・貸し切りだ」  声に甘さが混じってしまうのは仕方ない。  久しぶりの恋人との時間なわけだし。  女を縛っている椅子ごと廊下に放り出して、ガキをつれてこよう。  僕は浮かれる。  しかし、僕はおかしなことにふと気付く。  あのトラックは動いていなかったか?  ずっと駐車していたのではなく、ワイヤーをつたって詐欺師達が降りて行く間あのトラックはゆっくりと歩道を動いていなかったか?  まるで、詐欺師達の真下にいようとするように。  それに、ホテルに納入するトラックが歩道に駐車などするか?  それに駐車してから運転手は降りてこなかった。  まだ運転席にいるはずなのに。  なのに今荷台に何か落ちてきたのに何故、運転席を降りて確かめようとしない?   僕としたことが!!  ガキか可愛すぎて浮かれてた!!  「犬!!トラックを運転しているのは傭兵だ!!」  僕が叫ぶより先にトラックはものすごい勢いで走り出した。  犬の部下達がトラックにたどり着く前に。  やられた!!  逃げられた!!  「・・・追跡しろ」  僕はため息をついた。  逃げられるだろう。    やられた。  してやられた。    ・・・まあいい。  後から手は考える。   今はとにかく・・・ガキを抱く。      

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