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祭がはじまるまで 11
「おはよう」
あの人の上機嫌な声で目が覚めた。
あの人が微笑んでいる。
軽く唇を吸われた。
まだ監禁されたままかと思った。
詐欺師に閉じ込められていたホテルの部屋だったからだ。
昨日?
もう昨日になるのか?
あの人に倒れたいた廊下からここに連れ込まれたっけ。
俺もあの人も裸のままだった。
身体は綺麗に拭かれてた。
おそらく好きなだけ出された中も掻き出してくれているだろう。
僕は不機嫌な顔をして背中を向ける。
しばらくこの人とは話をしたくなかった。
あの人が困惑する気配を感じるが知ったことか。
「あの、あの・・・怒ってる?」
あの人がおどおど何か言い始めたが聞かない。
布団を被る。
「・・・ごめんね、ごめんなさい・・・」
あの人が謝り出した。
あの人は基本謝らない。
謝るくらいなら殺してきたと豪語していたからそうなんだろ。
僕には謝るしそれがどれだけ特別なことなのかも知っているけど許さない。
「・・・」
あの人は困っている。
でも知るか!!
僕はものすごく怒っているんだ。
あの人がベッドから降りる音がした。
チラリと目をやったら、ベッドから降りて床に正座をしていた。
「ごめんなさい。あんな真似は二度としません」
あの人は床に額をこすりつけて言った。
これはさすがに驚いて跳ね起きた。
これは有り得ないからだ。
天より高いプライドのあの人が!!
でも許さない!!
声には出さないがあの人には伝わったらしい。
「お願い・・・許して?」
困り果てた声で言った。
「許せるわけないだろ!!あんた俺に何をしたのか忘れたとは言わせないからな!!」
俺は怒鳴った。
俺が詐欺師の洗脳にあっていて、あの人と戦わさせられていたのはわかっている。
だからあの人にバラバラにされたのも。
左腕一本しか胴体に繋がっていなかった状態にされたのも。
それはいい。
俺もあの人の喉を噛みきろうとしていたからそれはいい。
あの人と戦っていた時に見た悪夢も、聞こえてきたあの人の声も、そして俺が選んだ選択が俺を詐欺師から解放したことも、今はいい。
大事なことだけど、今はいい。
あの人、詐欺師達が逃げてしまった後、俺に何をしたと思う?
俺は戻ってきてくれたあの人を見て微笑んだんだ。
手足はまだ繋がってなくてその辺に転がっていたし、痛かったし、苦しかったし、あの人が好きで好きでたまらなかったし、あの人が欲しくて欲しくてたまらなかった。
あの人が手足を繋いでくれて、また獣みたいに身体を求めあうのかと思ったら劇痛の中でも勃起しそうになった。
だけど戻ってきたあの人は僕に何をしたと思う?
血を流し呻いている恋人にどうしたとおもう?
「許して欲しい・・・可愛かったから、つい」
あの人は困り果てた声で言った。
いつもなら許す。
どちらかと言えば俺のが惚れてるのはわかっているからだ。
だが今回は許せない。
「あんたは可愛かったら血を流して倒れている恋人の顎関節まで外して口に突っ込んで喉に出すのか!!」
俺は怒鳴った。
そうされたことに一番驚いたのは俺だ。
戻ってきたあの人は、俺を抱き締めたり、名前を読んだりしてくれるのかと思ってた。
やっと再会できた恋人らしく。
そして手足を繋いでくれるのだと。
恐ろしいことに、この人は飢えたような目で、部屋から廊下に出てくると、まっすぐ俺のもとにやってきたと思ったらまず最初に俺の口に自分のもんを突っ込んだんだぞ。
俺が噛んだりしないようにご丁寧に顎まではずして。
喉の奥まで犯された。
確かに一度放った後は優しく抱きしめられて、この部屋につれてきてくれて、手足も繋いでくれたけど。
そこからはとことん朝まで抱かれたけど。
まず射精が一番ってなんだよ。
人を馬鹿にしてないか?
俺かあの時どれだけ惨めになったのか分からないのか。
いや、この人に分かれと言うこと自体が間違いだ。
「俺はセックスの道具なのか?まだあんたの『穴』なのか?」
俺は悲しくなって叫んだ。
そうじゃないとは思ってる。
でも、これはあまりにもやりすぎだった。
「違う違う違う・・・恋人だ。僕の大事な恋人だ」
あの人は真剣に言う。
「じゃあなんであんな酷いこと・・・」
俺は泣きそうになる。
今までだって散々酷いことはされてきた。
でも昨日のアレは最悪だった。
俺だって傷つく。
嫌いになれないからこそ、余計に腹が立つ。
しばらくは、この人といつものように過ごすつもりはなかった。
しばらく。
自分でも悲しくなる。
しばらくそうする位しか俺がこの人に出来ることないのだ。
離れることも出来ない。
ちょっと切ない。
どんだけ好きなんだよ。
「どうしたら許してくれる?」
あの人が困り切った声で言った。
その時俺は思いついた。
思いついたんだよ。
「・・・抱かせて」
俺はストレートに言った。
あの人は固まった。
「・・・それは・・・」
あの人はモソモソ言う。
俺は黙って布団に潜り込む。
床に座るあの人に背を向ける。
あの人が悩んでる。
悩んでる。
床から立ち上がる気配。
俺に寄り添うように隣りに横になる。
布団を被る俺を布団ごと抱き締める。
また昨日みたいに俺を気持ち良くして誤魔化そうとするの?
確かに、あんなに酷いことをされたのに、俺は傷ついていたなのに、あんたに触られたら狂った。
あんたが欲しくて乱れた。
でも、悔しくて悲しかったのに。
あんたが好きだから苦しいし、あんたが好きだから悲しいのに。
俺は布団の中で泣く。
「・・・わかった。一回だけだぞ。詐欺師の件が片付いたらだ」
聞こえた声に耳を疑った。
思わず布団からが顔を出す。
あの人がにがり切った顔をしていた。
まさかあの人が「いい」と言ってくれるとは思わなかった。
俺に抱かれるのは本当に嫌がるからだ。
・・・あんなに気持ち良さそうにするくせに。
「いいの?」
俺は思わず笑顔になってしまう。
布団など放り投げてあの人に抱きつく。
俺の腕の中にとじこめたい。
俺のがあの人より背が高い。
もっと高くなる。
俺はまだ成長中だし。
俺のが身体か大きい。
あの人は細身だし。
もっと大きくなってこの人を包み込みたい。
「詐欺師の件が終わったら、一回だけだからな」
あの人がため息まじりに言った。
この人は嘘はつかない。
「うん」
俺はあの人の頬に自分の頬をこすりつけた。
「・・・仲直りだよね」
あの人が俺の髪を撫でながら囁く。
「うん」
俺もあの人の首筋にキスをおとしながら言う。
どうせ、怒ることしか出来ない。
何をされても、離れられない。
離れられるわけがないのだ。
顎を掴まれる。
俺は自分から唇を開いた。
あの人の唇が重なってくる。
俺は自分から舌をいれた。
あの人の舌を味わうために。
それをあの人の舌に絡めとられる。
こすり合わされ吸われ、俺はうめいた。
キスだけでこんなに気持ちいい。
俺は夢中になってしまう。
仕方ない。
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