177 / 275

祭りがはじまるまで 13

 「お前は分かってない」  抱きしめ、抱き締められている。  その俺の腕の中てあの人がいう。  震える声で。  「分かってる。分かってるよ」  俺はあの人をあやすように言う。  「ごめん。俺ばっかり好きみたいな言い方して。知ってる。分かってる」  あんたが俺を愛してるいること。  言えなくてもそれを伝えてくれていること。  髪を撫でる。  背中を撫でる。  あの人は俺を抱き締める。  顔が見たいけど、見ないであげる。    でも、あんたも分かってない。  あんたこそ俺を分かってない。  俺が詐欺師の洗脳から逃れられたのは、あんたが自分を殺す許可をくれて、罪悪感から逃れられたらからじゃない。  俺はあの時決めたのだ。    あんたが「殺していい」と言ってくれた時に。  俺は決めたのだ。  あんたの罪は全部俺の罪だ。  あんたが今まで殺した全ての罪も、これから殺す全ての罪も俺は引き受ける。  俺が償う。  もう許されたいとは思わない。  許されることさえ諦める。  俺はあんたが殺した以上に人を助ける。  俺はあんたの側にいて、あんたが間違えるなら止める。  一人でも多く助ける。  見殺しになどしない。  俺の全てをなげうってそうする。  俺は正義の味方じゃない。  正義の味方はあんただ。  何の罪の意識も持たないあんただ。  俺は罪を償い続ける。    ゆるされことさえ望まず、一人一人一人、ただ助けていく。  そして俺が死ぬ時には、あんたの死者達に俺をくれてやる。   俺は許されることを諦めたのだ。  俺は罪悪感を持つことさえ諦めたのだ。  だから、詐欺師の洗脳から逃れた。   詐欺師は俺の罪悪感を利用していたから。  「分かってるよ」  俺はあの人に囁いた。  もう、聞かなくていいんだ。  言ってくれなくていいんだ。  「愛してる」と言われないことも、多分罪を償うことの一つなんだろう。  あの人は俺肩に顔を埋めて震えていた。  俺は肩を濡らす暖かい何かに気付かないふりをしてあげた。  「挿れていい?」  小さな声であの人が言った。  思わず笑ってしまった。  いつでも好きなように突っ込んでくるくせに。  本当に反省しているらしい。    いつまで持つのか分からないけど。     「いいよ・・・でも、今度挿れさせてよ。約束だからね」   俺は言った。  あの人の顔を覗き込む。  何とも言えない顔をしているあの人にまた笑ってしまう。  仕方ないなのか、困ったなのか、照れてるのか、嫌なのか。  色々な表情がごちゃ混ぜになっていた。  そして綺麗な目が濡れていた。  こんな顔のあの人は優しいあの人以上にレアだ。  「笑うな」  あの人は憮然として言いながら俺を押し倒す。  俺は腕を伸ばしあの人を迎える。  脚を広げ、挿れやすい姿勢をつくる。  あの人は今は照れたみたいな顔をしていた。     「来て」  俺は微笑んだ。  あの人は痛みに耐えるような顔をした。  「・・・お前は、ホントに」  苦しげな声で囁かれ、可愛い、と続けられた。    可愛い可愛い。    そうくりかえされる。  「  」  何度も名前を呼ばれながら、あの人は俺の中に自分をうずめていく。  昨夜何度も受け入れたそこは柔らかく溶けてあの人を受け入れた。  精液を掻き出してはくれていたけど、まだ中は濡れていて滑らかにあの人のがそこで擦れるように奥へ奥へと入っていくのが気持ちいい。  「奥・・・欲しい」  俺はねだってしまう。    「ん」  あの人は頷き、ゆっくりと腰を進めていく。  俺は吐息をこぼす。  広げられていくだけで気持ちいい。    思わず締め付けてしまって、あの人が呻く。  「  」  名前を呼ばれる。  「可愛い」  囁かれる。  それは全部全部。  「愛してる」の代わりなんだろ。   分かってる。  一番奥をゆっくりと突かれた。  身体が痙攣した。  涎が止まらない。  脳を直接犯されてるみたいだ。  なのに優しい。  いつもみたいな、奪うようなセックスではなく、優しく思いやられるように抱く、あの人のらしくなさに泣ける。  「・・・ごめん、ごめん・・・強くしていい?」  あの人の切羽詰まったような声に、止まらない涙で霞む目であの人を見上げた。  あの人が耐えていた。  必死で耐えていた。  欲望で目を光らせているのに、それを必死で抑えていた。  「・・・強くじゃないだろ・・・酷く、だろ?」  俺は笑った。  優しいだけでは物足りなくて、結局我慢出来なくなっちゃったんだろ。  優しい男になんてあんたはなれない。  ならなくていい。  俺があんたに優しくするから。  あの人が呻いた。    ガツンと腰が叩きつけられた。  「あっ!!」  苦痛と紙一重の快感に俺は声をあげる。    「まだ・・いいって言ってな・・・」  俺は悲鳴をあげた。    だけどもうあの人が優しさを頑張るタイムは終了していたらしく、あの人は激しく突き上げ始めた。  身体を折りたたまれ、容赦なく奥まで貫かれる。    余裕もくれない激しさは耐えられない快感でもあり、苦痛でもあった。  酷い。  痛い。  気持ちいい。  愛してる。  もうだめ。  全ての感情がぐちゃぐちゃにされる。  「可愛い」  あの人が叫ぶ。    可愛がっているとは思えない程酷く俺を扱いながら。    「可愛い」  首筋に歯を埋められ、血が吹き出す。    なのに俺のモノは白濁を吐き出す。  壊すかのように動かれているのに、俺にはそれが快感になる。  抉られ、貫かれ、もういいと思ってもさらに与えられ、パンクさせられる。  何度も何度も脳が焼かれる。  好きなだけ中で出されかき混ぜられた。  なんの遠慮も気遣いもない。  嬉しそうにあの人は笑っていた。  楽しそうに俺を貪っていた。    結局・・・こうなる。      「あんた・・・ホント、最低」  俺は何度も飛ばされる意識の合間に呟やいた。  愛してる。  だけどあんたが最低なのは・・・事実でしかない。  でも、俺は快感に溺れた。    

ともだちにシェアしよう!