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祭りが始まるまで 15

 これはもう仕事じゃない。  そう解っているのに男は自分が止められなくなっているのに気付く。  まぁいい。  あの人は勝手にオレがこうしたって気にもしないだろう。    男はそう思う。  とうせ全員殺すつもりなのだ。  その前に楽しませてやっているのだ。  感謝されてもいい位だ。  上手に選んだつもりだ。  20代半ば位の、少し役職のある身分の色の教団服を着た信者。  好みからは少し外れるが可愛い顔をした男だった。  首筋の綺麗さがエロかった。  で、引きずりこんだ。  上位の色の幹部服は効果抜群であることにいつもおどろく。  強引に倉庫に連れ込んでも、押し倒しても、服を脱がせても抵抗らしい抵抗はなかったのだ。    コイツらには自我がないのだ。    男は呆れる。  だが、選択は間違っていなかった。  ちゃんと後ろも使ったことのある信者だった。  地位があると言うことは長く教団にいた証拠だ。     セックス三昧の日々を過ごしていた奴らだ。     ローションこそ持ち込んだヤツを使ってやったが、それほど手間をかけずに挿入したのに、挿れた反応も良いし、きつすぎない使い心地も程よい。   教団が禁欲的になった今でも、自分でしてるんだろう。  後ろまで使って。  これなら十分楽しめる。      男は上機嫌になる。    侵入が見つかってない自信はある。  ゆっくりの楽しむつもりだ。  あれほど何度も侵入してやったのにコイツら全く学んでいない。  人や機械を増やせばいいというものではないのだ。  素人はこれだから。  だけど抱くのは素人の方が好きだ、と男は思う。  しかもこういう、汚れてないっぽいのは悪くない、と。  まあ、そうとう数はこなしてそうたけど。  とも思う。  鼻歌混じりで腰を気ままにうちつける。  四つん這いにして尻だけ上げさせた身体が波打つ。  やはり久しぶりなのか、餓えたように穴が締め付けてくるのがいい。  セックスを推奨されたり、否定されたり、欲望さえ自分達では決められない人々。  男はおかしくなり笑う。  好きなように抉った。    淫らに信者は喘ぎ、声をあげ悶えた。  その白い肉は気持ちよく貪るのに最適だった。    たっぷりと注ぎこんでやれば、身体をふるわせ、信者もイった。  これくらいこっち勝手にしても、自分で楽しめる身体で遊ぶのか楽で楽しい。  丁寧に丁寧に追い詰めてまで抱きたいのは恋人だけだ。    乱暴に引き抜く。   擦れる感覚に信者は呻く。  そんなところは可愛い。     「お口あけてくれるかな?」  男は性器で信者の頬を叩いてやる。  「お前の口で綺麗にして」  精液とローションにまみれたそれを突きつける。  先ほどまで本来は排泄に使われるところにおさめられていたそれを口に入れろと言われ、信者はひるむ。  「出来るよね」  男は教団服はあえて脱いでいない。  何故なら着ていれば何でも言うてことを聞くからだ。  社会が辛くてカルトに逃げてきたくせに、社会の縮図のような身分制度には愚かしいほどに従順な信者達。    男の思った通り、信者は男のモノを咥えた。    「綺麗にしてよ。ちゃんと根元まで舐めて」    男は囁いた。  信者は言うとおりにする。  男のモノはその口の中で育つ。  心地良かった。  信者の頭を押さえつけた。  喉を犯す。  苦しむ声が心地良い。  喉の感触が気持ち良い。  苦しませるために動いた。    「えぐぅ・・うげっ」  苦しさに暴れる身体のふるえがたまらなかった。  こんなにされても、歯もたてない。   バカだ。  男は思った。     だから楽しいとも。  信じきれるまぬけさを笑う。  何をされても、これが必要なことなのだと自分を騙せるひたむきさが実に可愛い。  だっておかげて貪れる。  苦しげに白目むく表情を楽しみながらその喉に放った。  まだ足りない。  まだ足りない。    遊びたりない。  えずき苦しむ身体を裏返した。  恋人以外は背後から突き上げる方が好きなのだ。  男は乱暴に腰を掴んで押し入れた。  衝撃に、信者が泣く。  本来は、相手も楽しませなから楽しくセックスするのが好きだったのだが、もうどうでもよくなっている。  恋人に会いたい。  こんなのいくら犯しても足りない。   恋人を抱きたい。  あの生意気な猫のような目が快楽でぐちゃぐちゃになって、最後の最後に素直になる瞬間がみたい。  素直になりすぎて、トロットロに蕩けるところがみたい。    「セックスって愛だよね」  他の男を乱暴に犯しながら言う。  「他のヤツじゃ、ホント物足りない」  奥まで突きいれ、悲鳴を上げさせながら言う。  でも、そう言いながらも、奥をしつこく突いてやり、イかせてやることに専念する。  「何でもさせてくれんのは好きだよ」  男は囁いた。  「多分、二人がかりとか3人がかりでも、やらせてくれんだろ?誰かを殺せって言っても多分殺してくれるもんな。そういうのいいねぇ。上の言うことにはなんでも従う」  男は微笑む。  「言いなりで役に立ってくれるのっていい。大好き。気持ちいいこと沢山して欲しいし」  何度も何度も信者が震えているのは奥でイキっぱなしになっているからだ。  「・・・でも飽きるよね」  男は穴から引き抜いた。  信者は呻いた。  乱暴に突き放す。  まだガチガチに勃ちあがったままだ。     飲ませてもいい、ふやけるまでしゃぶらせてもいい。  命令すればなんでもするだろう。  「あんた達つまんないんだよねぇ。多少慣れてるか慣れてないかだけで最終的には全員一緒だし、あんた達もそれでいいんだよな、つまんないねぇ」  男は心の底から言った。  抱きやすい抱きやすくない、それくらいの差はある、それは確かに大事ではあるか、結果は一緒だ。    つまらない。  何回抱いても何回殺しても同じだ。    何も考えない。  ひたすら従う生き物。  「・・・せめてあんたは他のやつらと違う風にしてやろうか?」  男は言っては見たが、信者がそんなことは望まないことはわかっていた。  同じになって。  自我を解け合わせて。   一つの強大な何かになることで、ちっぽけな自分から逃れる。    なるほど、これこそが「救い」といつやつか。    くだらねぇ。  男は心の底から思った。  「つまんないんだよね、お前ら」  男は冷たい目で信者を見下ろしながら言った。  「なんだがあの人がお前たちを殺したい理由がわかったよ」  あの人聞かせてもらえる理由は嘘ばかり。  そんなことはわかっていた。  ただ、殺したいという意志だけは伝わっていた。  それだけは本当。  実際に恋人を抱かせてくれなければ誰があんな男を信じる者か。  でも、確かに男は恋人をだいたのだ。  だから信じる。  そしてコイツらを殺し尽くさない限り恋人は生き返らない。  なら殺そう。  全員殺そう。  最初の頃、申し訳程度にあった罪悪感のようなものはあまりにもない。  あまりにも何も考えず、幹部の服を着ているだけで何でも従う彼らを見ていてそんな気もすっかり失せた。  コイツらは集合体だ。  1人の人間であることをやめてしまった。  上がセックスを推奨すれば、せっせとセックスに励み、誰かを殺せと言われたならせっせと殺す。    気持ち悪い。    そう、思った。  自らを犠牲にして捧げることに喜々とする、何も考えない奇妙な生き物。  だけど男は知っていた。  化け物を人間に戻す方法を。  信者も男が幹部ではないのではないのかと考え始めていたようだ。  男の顔を見ながらじりじりと後ずさる。  「まあ、やりたくて頼まれてもないのに来たのはオレだけどね」  男は頭をかく。  セックスする相手には困らないのにわざわざここに来てしまった。  多分。  セックスよりしたいことがあるから。  「・・・仕事か自分を守るため以外に殺したことはなかったんだよね、オレ。これでも」  男は正直に言う。  「・・・なんて言うの?お前ら見てると子供の頃に蟻の巣に水を注ぎ込んだり、蟻の巣ひっぺがして踏みにじったりした時の感じがするんだよね」  男は微笑みながら言う。  その手にはいつの間にかナイフが握られていた。  信者は悲鳴をあげようとした。  男は満足した。  そこにはちゃんと人間がいた。  そこには死にたくないと言う意思があった。  そう思うように強いられた意志なとなかった。  死ぬのを恐れる1人の人間がいた  殺す時は、人間にもどれる。  声が出ることはなかった。  あっと言う間に喉を切り裂かれていた。  男は血を吹き出しながら死んでいく信者を見ていた。  そして困ったように自分のまだいきり立ったままの性器を眺めた。  そして信者を見て微笑んだ。    男は喉の切り口を口の代わりにしてそこに自分のものを突っ込んだ。  さすがに喉の奥は思っていた以上に狭くて、深く入らなかったが、口を開いたように開いた傷口で先を咥えさせるようにうごかすのはそれはそれで気持ちよかった。  男はため息をついた。  でもこれでは・・・・。  男は思いついたように腹を切り裂いた。  その暖かい傷口に突っ込んでみた。  これは、予想以上によかった。  見た目こそグロいが、オナホだとおもえばイける。  濡れた暖かいそこで男はじっくりと楽しんだ。  生きていた時の後ろより良かった。  もう死んでいるんだし、身体をどうされたってわからないからいいだろう。  男は思った。  オレは狂ってる。  男は自覚している。    狂っていなければ死んだ恋人を生き返らせようなんてしない。  狂っていなければあれほど嘘しか言わない男を信じたりはしない。  気持ち良さに喘ぎながら男はぐちゃぐちゃに内臓の中で自分のモノを動かした。  ああ、気持ち良い。  でも一番気持ちよかったのは・・・喉を切った時だった。  「オレも壊れちまったな」  男は傷口の奥深くに放ちながら呟いた。  こんな仕事をしているヤツはみんな壊れていく。  飼っているつもりだった猫と恋人が自分をつなぎ止めていたことに男は今更気付く。  恋人さえ生き返れば。    生き返れば。  会いたい。  会いたい。  男はもう一度、その腹の傷をあじわうことに決めた。  そして、ゆっくりと動きはじめた。      

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