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祭 3

 俺は受付で口座に20万円振り込んだことを証明する振り込み用紙の控えと、送られてきたチケットを提示する。  イベント会社から手配されたであろう綺麗な受付の女性は色んなイベントの受付にも対応できそうな黒いシンプルなスーツを着て、プロフェッショナルに微笑んだ。  「開演まで15分です。会場内での飲食はお断りしております」   受付の女性の言葉に頷き、プログラムか入った封筒を受け取る。  「世界を変える前に自分を変えよう」そうプログラムに書かれた文字がそんな風に並ぶ。  俺は感心する。  この会場の手配からプログラムの中身までイベント会社と相談しながらやってのけたのは情報屋だ。  詐欺師はニコニコしながら情報屋を働かせていただけなのを俺は知っている。   忙しそうにキーボードを叩く情報屋の背中にもたれて抱きついたり、「邪魔するな!!」と怒鳴られながら情報の耳を舐めてたりしていたのを覚えている。  アイツ情報屋に甘えてただけだぞ。   ダメなヤツだ。  あの人と違う方向でダメなヤツだ。  天然モノのヒモ体質だ。  アレは。  あの人は意外と仕事熱心だけど。    あの人のダメな方向はパワハラ使い捨て方面だ。  常にボロボロにされる役割を担う俺が言うから間違いない。  情報屋は電話し、打ち合わせし、忙しそうだった。  あの人すごいな。  全く専門外の分野だろうに。  なんかなんか。  それっぽいぞ。  自己啓発のセミナーっぽいよ。  本物の。  あの人、詐欺師になれるよ。  俺は感心した。  会場に入る。  300人は収容可能な会場は二階席は閉鎖されていたため、ほぼ満席だ。  200人以上はいるはずだ。  「会場に入った。着席して始まるのを待つ」  俺は呟く。  声はシャツにつけられた盗聴器から無線であの人とスーツに送られているはずだ。

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