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祭 10

 「人間がコイツを見捨てたからコイツが生まれた。コイツは一度だって誰かに助けもらえるとさえ考えたことさえないんだ!!コイツはもう駄目だ、腹の底から腐っている、そんなのわかってる!!でも・・・コイツを人間でなくしたのは人間なのに、化け物になってまで化け物にまで見捨てられたら・・・可哀相すぎるだろうが!!」    神経ガスが効き始め、フラフラしながら情報屋が叫んだ。  詐欺師は生まれた時から教祖に捧げられ、意志など認められず貪られ続けた。  人間達に。  誰も助けなかった。  誰も意志など確かめさえしなかった。  可哀相だと情報屋は叫んだ。    俺は衝撃を受けた。  可哀相だと叫んだことじゃない。  情報屋が詐欺師に同情したことにじゃない  情報屋は化け物として立っていた。  情報屋は人間の側にいることをやめていた。  同じ化け物として、詐欺師の場所に立っていた。  見る位置が違った。  化け物として見たのならば、情報屋が詐欺師を助けることこそが正しいのだ。  それこそが正義なのだ。    獲物を狩る猟師が獲物に襲われたのならば、助けてやるのが同じ猟師であるように。  情報屋は・・・人であることをやめていた。  「オレは帰れないんだよ」 情報屋の言葉の意味が俺は腑に落ちた。  この人はもう・・・あちらに言ってしまったのた。  人間を殺すことを望みはしないけれど、詐欺師を助けることになんの躊躇いもない。  なんの罪の意識もない。  だってもう人間ではないからだ。  この人は、詐欺師を守る。  同じ化け物として。  そして・・・人間だった詐欺師を誰も人間が護らなかったのとは違い、化け物であるこの人は化け物である詐欺師を、化け物として守るのだ。  情報屋の身体がぐらついた。  神経ガスが効いてきたのだ。  俺はガスマスクをしているが情報屋はしていない。  俺は情報屋の言葉に少なからずショックを受けていた。    人間は人間を守るべきだ。      これはわかる。  でも、俺は何なんだろう。       化け物なのに化け物を狩る。  ・・・もう人間には戻れないのに。  俺は別の倫理を見せつけられたのだ。  ・・・でも。  「じゃああんたには少し大人しくしてもらうしかない」   俺は山刀を振りかざした。    ガスも効いているし、手足を千切ってしばらく邪魔しないでもらう。  嫌な予感がした。   俺は情報屋を斬りつけようとした瞬間、襲ったその予感を信用した。  俺は斬りつける代わりに屈んだ。    銃声がし、髪の先を何かがかすめていったのを感じた。    傭兵だ。  頭の先を掠めたのは銃弾か。  コイツが来ることは分かっていた。  むしろ、遅かった。  コイツが一緒にいることを想定しての神経ガスでもあったのに。  人間である傭兵には神経ガスは良く効くはずたからだ。  コイツは会場にはいなかったのだ。    モニターか何かでこちらを会場の外から確認していたのだろう。  で、今詐欺師と情報屋を救出にきた。   だがガスマスクを常備しているとは思えないのにガスのたちこめる会場に?  その疑問は足元に転がってきた手榴弾で納得した。    それは爆発した。  俺の手足を吹き飛ばしながら。  呼吸をわずかしかしない間に詐欺師と情報屋をつれて逃げるつもりだからだ。  「・・・傭兵だ!!」  俺の声はスーツとあの人に届いただろうか。  俺は手足を吹き飛ばされ、吹き飛ばされる前にそう叫ぶことには成功した。

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