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祭 12
マンホールから二人の人間を抱えて上がってきたことには関心した。
大したもんだ。
確かに犬レベルでデカい男ではあるが。
二人抱えてここまで逃げれるってのは・・・生身の人間としてはすごいとしか言いようがない。
小柄な情報屋と細身の詐欺師と言え、男二人を抱えてここまで下水道を走ってきたのだ。
いや、これは凄い。
素直に讃える気持ちになっていた。
僕は出てきた傭兵に拍手を送った。
マンホールを上がった先で待っていた僕に、さすがに傭兵は驚いていたようだった。
「僕がここにいるとは思わなかった?」
僕は微笑んだ。
もう嬉しくてたまらない。
僕はコイツに会いたくて会いたくてたまらなかったのだ。
「会いたかったよ。会いたくて会いたくて。恋かと思ってしまう位だった」
僕は正直に言った。
ガキが攫われている間中、ガキのことを考えるよりも多くコイツのことを考えていたかもしれない。
コイツを刻むことばかり考えていた。
「あんたは俺の好みのど真ん中だ。まだ俺の恋人は生き返っていないからね、相手してやってもいいぜ。ズボンを下ろしてケツをこっちにむけな。いくらでも突っ込んでやる」
傭兵はドサリと毛布につつんだ二人を地面に放り出しながら言った。
包みのように包まれたふたりはまだ意識を失っているのかピクリとも動かない。
「突っこまれるのはお前だよ。お前のモノを切り取って、それをお前の穴に突っ込んでやるよ」
僕は新しい拷問を思いついて嬉しくなる。
「・・・オレがここに出るとどうして予想できた?」
傭兵は不思議そうに尋ねた。
「ガキを攫った時もマンションの近くの駐車場には宅急便のトラックがあった。詐欺師と情報屋を逃がしたのはパン屋のトラックだった。そして、今回もホールの近くの駐車場には近くの工事現場で仕事をしている建築会社のトラックがあった。荷台のコンテナや色や文字以外は同じトラックだ。そして、トラック下にはマンホールがあった」
マンションからガキを連れて逃げた時も、マンション近くのマンホールから駐車場のマンホールまで移動して、ガキを荷物にみせかけて詰め込み逃げたのだ。
コイツは下水道がどこからどごまでつながっているのかを知っているのだ。
地上を探し回っている間に地下を利用してにげていたのだ。
それに気づけば、ホール近くの駐車が出来てなおかつ、同じトラックを置いているマンホールの場所を探しておくだけでいい。
もっとも、今回はセミナーの会場、教団の生誕祭の複数の会場、使える人員は僅かなのに抑える範囲が広すぎて僕しかここに来れなかったけどね。
犬は追々来るだろう。
連絡はしてある。
「・・・あんたも不死身の化け物か。あの坊やより厄介なんだよな」
傭兵が困ったように言った。
「しかも・・・烈火の如く怒っている」
傭兵がため息をついた。
さあ、どうしてやろう?
僕は歯を剥いて笑った。
たかが人間風情が。
「じゃあ仕方ないな」
傭兵はあっさり言った。
そして、出てきたばかりのマンホールの穴に一人飛び込んでしまった。
詐欺師と情報屋は置き去りにしたままだ。
何?
僕は傭兵を追うより先に詐欺師と情報屋に駆け寄る。
確認の必要があった。
あの男がこの二人を置いていくはずがない。
顔まで覆われた毛布を取る。
・・・別人だ。
詐欺師も情報屋も嘔吐物にまみれた違う人間だ。
微かに呻いている。
しまった!!
会場で詐欺師と情報屋を入れ替えたのだ。
おそらく詐欺師と情報屋は病院に搬送される被害者達の山の中に入れられている!!
おびき出されたのだ!!
僕が!!
僕はカチリという音を聞いた。
背後の置き去りにされたトラックからの音だった。
僕は咄嗟に詐欺師と情報屋の身代わりにされた人間達の上に多いかぶさった。
肉体の壁があれば・・・命は助かるかもしれない。
こんな奴らの命などどうでも良かった。
でも・・・一人でも死ねはガキが泣くだろ!!
トラックは爆発した。
飛び散った破片が僕の身体にのめり込んでいく。
肉が千切られる感触がした。
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