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祭13

 僕の身体の下の2つの身体は呻いていた。  まだ生きている。  トラックに仕掛けられた爆発物の勢いはそれほどでもなかったのかもしれない。  だが、僕の後頭部から背中側にはびっしりとコンテナの木片や、金属の部品が突き去っていた。  頭や胴体は僕の身体で覆えたからよかったけど、下の2つの身体の手足にも破片は突き刺さっていた。  命は助かっても、五体満足というわけにはいかないだろうな。  でもまだ死んでいないから・・・セーフだよな、ガキ。  死ぬなよ。  しばらくは。  事件が解決してから死ね。  とりあえず僕が関係している間は死ぬな。  僕はヨロヨロと立ち上がった。  何故なら分かってたからだ。  僕は今、ボロボロだ。  なら、来る。   こんなチャンスは逃さない。  爆発の音に警察や何かがくるより先に僕を動けなくする為に戻ってくる。  ひょっこりとマンホールから顔を出したのはやはり傭兵だった。  人好きのする笑顔はこんな場面には似合わない。  「ホント好みなんだよね。オレはワガママで傲慢そうな美人に尽くすのが大好きなんだよね・・・、でもあんた後ろは使ってないんだって?あの可愛い坊やを抱いてるんだって?もったいない・・・あんた、抱かれる方が似合うって」  傭兵は僕の前に立った。  「そんなことを言う奴は珍しいな。毒蛇を抱きたがるような奴がいるとは思えないけどね」  僕は言った。    一人だけ知ってるけどね。  マズい。  脳にまで破片か食い込んでる。     回復に時間がかかる。  僕のからだは破片の一つ一つを、排出しながら身体を繋いでいた。  「性格悪くて我が儘で危険なヤツをこの腕の中で蕩けさせんのがいいんじゃないの。たまんねーよ、そういうの。我が儘なら我が儘な程、性格が悪ければ悪い程いいんだよ」  傭兵は言った。  ・・・ガキと話が合いそうなヤツだ。  話では犬と話の合いそうなロリコンだと聞いていたのに。  その手には手斧が握られていた。  僕の手足を切り落としてどこかに閉じ込めるつもりか。    詐欺師の用事がすむまで。  「でも、もう一人そういうのは飼っているからあんたはいらない」  傭兵は僕に近づき手斧を振りかざした。    

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