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祭 17
いつものように街に出た。
田舎だが、観光地でもあり、街まで出ればヒトで溢れてる。
夜のネオンも華やかで、そういう場所で相手をさがしてきた。
大体は街のホテルで楽しむが、身体が合えば何度か会うこともあり、そうなると話の流れで車で二時間かかる家まで連れ帰ることもあった。
数人そういうセフレはいる。
そうすると少年と猫がそして怒りくるうのだが。
こればかりはやめられない。
長めの仕事で数ヶ月帰れなかった。
まあ、向こうでも相手を見つけて楽しんだが、仕事のプレッシャーから開放されて遊びたい。
馴染みの店に向かう。
帰って1日目はまず少年の性欲処理をしてやり、抱きしめて寝たのだ。
自分の遊びよりちゃんとペットを優先している。
出会いをさがす連中が集まる店だ。
セフレの誰かがいるかもしれない。
人を殺す仕事をしてますとは言っていないため、男はその人当たりの良さや、ノリの良さから人気者だった。
なのに、久しぶりに訪れた店に入ると、何故か人々の会話が止まった。
ひそひそと声を潜めて男をみて何か言っている。
傭兵稼業がバレたかと思ったが、バレたところで、マフィアや闇の稼業の連中も紛れ込む街で、それほどのインパクトがあるとは思えない。
よそよそしくはなるだろうが。
それでもセフレを見かけ、笑顔で近づいた。
セフレの笑顔が引きつった。
恐怖の表情だ。
いくらなんでもこれはおかしい。
男は不吉な予感がした。
何も言わず、背を向け走り去ろうとしたセフレを追いかけ捕まえる。
その肩を掴んだ時、セフレは叫んだ。
「やめてくれ。オレは殺さないでくれ!!」
その声は男が現れて静まり返った店に響いた。
男は驚く。
殺す?
オレが?
金にもならないのに?
そんな馬鹿なことはしない。
プロフェッショナルなのだ。
だけどセフレの怯えは本物だった。
男は車を飛ばし家に帰る。
数ヶ月海外で仕事することになった。
その少し前に少年にバイクを買い与えた。
街に行けるように。
勉強は嫌いだが本は好きな少年が買い出しに行けるように、長い1人の生活を慰められるように。
まあ、言うなら家猫を放し飼いにして見たのだ。
外に出して変な奴らに目をつけられるのではと言う
心配は今はなかった。
少年が他の所へ行ってしまう心配も。
少年を襲えば一般人はおろか、1対1ならプロでも少年に殺される。
誰が鍛えたと思っているんだ。
少年が他人に興味など持たないことはわかっていた。
その身体に指一本触れさせることもしないだろう。
ワガママにワガママに育てた。
本当に欲しいものしかいらない。
かわりのもので満足出来ることなど思いつきもしない。
昨日の夜も、男の手で欲望を何度となく吐き出す度、男の名前を呼び続け、男の肩に歯を立て果てたのだ。
育ちきった肉体に、触れたこともないのに尖っている淡い乳首や、白い首筋を、舌や唇で楽しみたいと思ってしまった。
だが、愛しさに耐えた。
この身体は玩具のように楽しむものではないと信じているからだ。
「抱いてよ・・・」
少年はまた泣いた。
男は笑って、そんな少年を抱きしめて寝たのだ。
震えながら泣く身体が愛しかった。
愛しかったのだ。
男は今、そして店でセフレから奇妙な話を聞た。
だから今、車を飛ばして家に帰る。
・・・男が寝た男達ばかりが消えていた。
今日店で怯えたセフレがそう言った。
男が車で街まで送ったはずなのに、その後、誰も姿を見たことがない者達がでてきたことに、ここに集まる者達は気づきだす。
こういう場所だ。
誰も本当の名前や住所も知らない。
ここに出入りしていることも知り合いには言っていないものもいる。
でも、特定の男と店から消えた後、姿を消すことは危険な匂いがした。
こういう場所だからこそ余計に皆敏感だ。
おかしなヤツが紛れ込む危険性を知っているからだ。
男の家に来たことのある連中だけが。
消えていた。
そんな不安をかかえていた時に事実が判明する。
「警察が来た。家のバスルームでめった刺しにされて殺されていたって」
震えながらセフレは言った。
まず、1人の行方が分かった。
警察は被害者がここに来て相手を漁っていたことにたどり着いたらしい。
そして、消えたのが1人ではないことを店に集まる者達は知った。
警察も。
この街ではよくある強盗にやられたように、街角で死んで行った連中がいて、それが全て男のセフレ達であったことを。
男の家に泊まった後に。
店の連中は怯えていた。
まるでそうしたのが男ではないかと言うように。
男はしない。
そんなことは。
でも心当たりはあった。
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