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祭 28

 「・・・悪い人ではないんだ」  あの子は傭兵について言った。  「そうだね」  俺は頷く。  悪い人とかそういう問題ではない。  危険なだけだ。  でも仕事のターゲットでもない限り、傭兵は確かに、妙に憎めない男だった。  あの子には教えない。  あの人とスーツが傭兵を殺しに行ったのは。  あの人とスーツを俺はトラックのコンテナの中で待っていた。   改造されたトラックで、荷台のコンテナ内部に様々な機材がある。  現在は詐欺師対策にネットは切っているが、連絡や盗聴、色々できる。  今はトラックの運転席にいる犬の部下達が、あの人とスーツをモニター中だ。  俺とあの子は実験室めいたコンテナ内のベンチに座っていた。  走行中用のシートベルトもある。  スーツはデカいロッカーみたいな金庫を背負って行ってしまった。  あの人の命令らしい。  中身については俺には教えてくれてない。  嫌がらせだ。  スーツが担いでヨロヨロ歩く姿に確信した。  俺も持つと言ったのに、スーツはそれよりあの子を見ていて欲しいと言って担いで歩いて行った。  警察が規制している先で爆発音に集まった人達は、そんなスーツをスマホのカメラで撮影していた。  「なにあれ」  笑う声が聞こえた。  嫌がらせだ。  ますます確信する。  後でどうやって誤魔化すんだろう。  誤魔化すのはスーツの仕事なので俺は知らない。  そこまで含めての嫌がらせだ。  あの人、本当にスーツが嫌いだよな。    「君の彼も良い人だ。優しい」  あの子が言った。  「・・・それは賛成できないな」  俺はきっぱり言った。  あの人を愛している。  だがあの人かいい人のわけがない。  俺はその辺は間違えない。  そんな勘違いは一ミリもしない。  あの人の性格の悪さは筋金いりだ。  でも、この子には優しい。  それも事実。    まあ、この子にかかれば傭兵でもあの人でもいい人になる。  今も傭兵を悪い人ではないと言ってるし。    この子の護衛を兼ねて俺はここにいる。  身体はかなり回復してきた。  千切れた手足はくっついた。  教団の復活祭に間に合う。  「・・・酷いことされてない?」  俺は心配になって聞いてしまう。  彼女は俯く。  それが答えだ。  指先が思い出したように震える。  小さな小さな身体が震えていた。  それが答えだった。  スーツ。   スーツ・・・あんたってヤツは。  わかるけど。     好きな子といたら色々したくなるけど。  嫌がることをしたらダメ、絶対。  俺がどれだけあの人に我慢しているか。  嫌がることはしたらダメ!!  まあ俺はあの人にめちゃくちゃにされてるけど、嫌がっててもされてるけど、俺の言うことなんて全く聞いてくれないけど、でも基本的にはあの人にされることは嫌じゃないわけで。  いや、嫌な時もあるけど、止めてった言っても止めてくれないし、痛いって言ってもするし、許してった言ってもするし、 恥ずかしいこともさせられるし、嫌っていったら喜んで余計にするし・・・。  俺も可哀相かもしれないと今更ながら気が付いた。    でも・・・俺はあの人とセックスすること自体は好きなのだ。  この子は違うのに。  この子には人に触れられること自体が苦痛なのだ。  でもこの子はスーツを愛している。    だから酷い目にスーツに合わされても許している。  ・・・でも、そんなことが続いたら、この子本当に壊れちゃうよ、スーツ。    俺は心配する。  コンテナのドアが開けられた。  あの人が入って来る。    服はボロボロ、血塗れだし・・・嫌な臭いまでした。  あの人は車内に乗り込む前に靴を脱いで道路になげ捨てた。    「汚いモノを踏んだからね」  そう言って。  俺は慌てる。  慌ててコンテナ内を探し回り、ビニール袋と手袋を発見、多分証拠とかいれるヤツだと思う、あの人がコンテナ内で脱ぎ捨てた服を放り込み、あの人が外に投げた靴も拾に行く。  ゴミ箱のポイ捨て絶対ダメ。  何の臭いだ?  ものすごく臭い。    あの人は一糸も纏わず、コンテナの隅にある小さな流しで顔と手を洗いはじめた。    これも多分・・・簡単な実験的なモノが出来るようにある設備なのかもしれない。  俺はあの子に言う。  「見たらだめ!!」    あの子は素直にあの人の方から目をそらしてくれた。  あの人の綺麗な背中、引き締まった臀部。  綺麗な首筋。   何も着ていないあの人は綺麗で。      俺は流しで手を洗うあの人を背後から抱きしめてしまった。  こんなことをしてる場合じゃないのに。    抱きたい。   この身体の奥まで入りたい。    首筋に歯を立て、中で擦りたて、出したい。    「・・・キスしていい?」  あの人に聞く。  あの人が振り返りなが苦笑したから、背後からあの人の顎を掴んでその口の中を味わった。  あの人が舌を絡めてくれるのが嬉しい。  優しく舌を噛んで、吸う。    「・・・お前のキスは優しいな」  唇が離れた時、あの人が優しい声で言ったから堪らなくなった。  でも我慢。    我慢。  まだ終わってない。  全部終わったら抱かしてくれるって言った。  触れる・・・。  この人に入れる。  気が狂いそうになる程嬉しかった    我慢。  我慢。  俺勃っちゃった・・・。  俺はため息をついた。  ドン    次の瞬間、俺は床の上に寝ていた。  あの人に倒されたのだ。  脚払いをかけられて。    この俺が全く反応できなかった。  「・・・可愛い、そんなに我慢できなかったの?」  あの人が俺の上にのしかかり、囁いてくる。  ゴリッと一糸も纏わないあの人のアレが股間にすりよせられた。  あの人のも勃っていた。     ガチガチのそれで擦られて思わず呻いた。  俺のシャツのボタンはもう外されていて、あの人の指はもう、俺の乳首を弄っていた。  押しつぶし、回されて、思わず喘ぐ。  乱暴な位の強さが、下半身に熱を送る。  ズボンもあっというまに膝まで下ろされている。  いつの間に!!

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