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祭 31
「そうか。僕はカッコイイか」
男は上機嫌だ。
確かに男の容姿に、そのタキシード姿は似合っていた。
危険で冷たい美貌としなやかな身体を包む正装は、外国の古い絵画のような荘厳ささえあった。
この男は正装することに慣れている。
どんな国のパーティー会場にもエレガントに佇めるだろう。
そういう立ち振る舞いを教え込まれているのだ。
「めちゃくちゃ・・・綺麗だ」
うっとりと少年は言った。
「そうか。僕が好き?」
男は溢れるばかりの笑顔で聞く。
「好き。すごく好き」
少年は熱っぽく言った。
男は嬉しそうに声を立てて笑った
なんとか仲直りだな。
夫婦喧嘩は程々にしてもらいたい。
私はため息をついた。
少年はタキシードではなくスーツだ。
着慣れてなく不自然なのは否めない。
だがそれが初々しくもあった。
男は優しくネクタイを整えてやる。
「お前も似合う」
男の言葉に少年は顔を赤らめた。
男はとても優しい微笑みを浮かべる。
この男にこんな笑顔が出来ることは、少年が来るまで知らなかった。
だが、その後に男の顔に現れた笑みは歪んで恐ろしいものだった。
「僕は今回は正義の味方じゃなくて・・・救い主だからね。全ての信者を救ってあげなけれぱね」
男の言葉と表情は全く一致していなかった。
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