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祭 28

 「あ・・・」  オレは喘ぐ。  ゆったりと動かれるのが気持ちいい。  溶けてしまう。  二つの肉体が熱く一つに溶け合ってしまう。  オレも腰を振って、動きを合わせる。  座ったまま、抱き合うようにオレ達は身体を繋いでいた。  「もっと・・・もっと・・・たくさんして」  オレはせがむ。  胸を優しく吸われた。  好き。  これ、好き。   「んっ・・・もっと吸って・・・噛んで」  オレがせがめば、優しく甘い痛みが与えられ、また吸われる。  オレを優しく求めるように抱いたのは嘘つきだけ。  尤も・・・嘘つきは最初はレイプだったけどね。  初めてセックスした相手のアイツは、必死すぎて痛いだけだったし。    可哀想に。  オレはアイツを想う。  アイツにはセックスは今でも傷つけ奪うためのモノなのだ。    可哀想に。    あの子を想う。  苦しく辛いだけの行為を強要され続けているのだ。    でも・・・それでもアイツを許し続けるだろう。  やっぱり・・・オレがアイツにぶち込んで教えてやるべきだったのだ。  互いに欲しがるセックスの良さを。  まあ、長いことオレも知らなかったけどね。  「痛っ」  乳首を強く噛まれた。  嘘つきが胸のところから睨んでいる。  コイツ・・・なんでオレが違うヤツのこと考えるの分かるんだろ。    「お前のことだよ、考えてたのは」  オレはため息をつく。  嘘ではない。  嘘つきの形のよい頭をなでた。  それは綺麗に剃り上げられていた。  オレが剃った。    嘘つきは眉をひそめたが、強く噛んだことをあやまるように、優しく舌で乳首を舐め始めた。  腰がまた揺らされる。    「んっ・・・」  オレは目を閉じ快楽に溺れる。  ここは生誕祭の会場近くのホテルだ。  救急隊で運ばれる最中に嘘つきが救急隊員の一人を洗脳した。  救急車は追突炎上し、オレ達はそこから逃げ出したのだ。  そこから傭兵が用意していたホテルに入った。  嘘つきはどんな姿にも見せることが出来る。  オレと自分をどんな風に見せているのかはオレには分からない。    嘘つきはホテルでシャワーでオレに身体を洗わさせた後、オレにカミソリで自分の髪を剃るように要求した。  髪を剃れば、頭にある酷い傷跡が露わになった。    だけど、髪をそりおとした嘘つきはしかった。  禁欲的な容姿がさらに際立った。  髪を剃り落とすと。  飾り立てることなどなくても美しい美貌は、髪という飾りさえなくしてしまえばさらに際立った。  どこから見ても美しい形をした顔や頭部は、自然でありながら、完璧だった。  山奥の静けさや繰り返す波の音みたいにおだやかで。    静謐な僧侶のような、清らかさがそこにあった。    まさかこの聖人がこんなに淫らなことをしているとは誰もおもわないだろう。  オレはベッドにうつ伏せに体位を変えられ、聖人のいやらしい腰つきに声を上げた。  焦らすように動き、耐えられない程に突かれ、満たされるように揺らされた。  コイツ・・・聖人なんかじゃない。     コイツ天性のヒモだ。  何にもしないくせにセックスと甘えるのだけめちゃくちゃ上手い・・・。  オレは前から何度も零していた。     いつもなら、「もうやめてくれ」と泣き叫ぶ頃だった。  でも今日は違う。  このままこうしていたい。  生誕祭なんて行かないで、ここでオレとセックスしていて欲しい。     でも終りはきた。  オレはオレの中で嘘つきが弾けるのをかんじた。  熱いモノで満たされる。    オレは震えながらそれを搾り取った。    待て!!  なんで中出し・・・もう時間がないのに。  ぐったりしているオレにキスして、嘘つきは一人でバスルームに向かった。  ええ?  オレは驚く。  あの男は片腕を失ってから、自分で身体を洗ったりしないのだ。  オレが洗ってきたのに。  オレは起き上がろうとしたけれど、ちょっと身体が動かない。  それでもよろけるように立ち上がろうとした。  好きにやられすぎて、立てない。     もう少し・・・休憩してから。  オレが回復を待っている間にさっさと嘘つきはシャワーを浴びて出てきた。  お前、自分で身体洗えるじゃないか・・・。    オレの目の前で、嘘つきは傭兵が先に部屋に届けていたトランクを開けて、服を取り出す。  そして自分で着る。  ずっとオレに着させていたのに。    片手で素早く嘘つきは服を着てみせた。  おい、お前・・・全然自分で着れるじゃないか。  真っ白な教団服だった。  あのカルトが出家信者に着せているヤツだ。  でも白は無位の信者の色だったはず。  でも、デザインは幹部達が切るモノだ。  

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