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祭 30
あんのクソヒモ野郎。
オレはベッドの上で吠えた。
両手両足をバスローブの帯で縛られている。
服も着てない、しかも中出しされて、穴から精液が零れる状態でベッドの上に放置されている。
何、この放置プレイ!!
「あのヒモ野郎!!絶対縛って犯してやるからな!!」
オレは怒鳴った。
オレの身体を嘘つきが名残惜しく撫で回していたのを思い出した。
アイツ・・・絶対時間さえあれば、と思ってたはずだ。
残念そうに穴に指まで入れてきやがったからだ。
あのド助平が。
オレを置いて行った。
理由はわかっていた。
沢山の人が殺されることをオレが嫌がるからだ。
それを嘘つきは止めるわけには行かない。
嘘つきには何よりも大切なことなのだ
あのカルトの信者を根絶やしにすることが。
だから、オレを置いて行ったのだ。
オレの目の前でソレが起こらないように
今さら・・・。
オレに死体までバラす手伝いをさせて、と言うよりオレが一人でしたくらいなんたぞ。
アイツ役立たずだから。
・・・今さらそうする理由は。
「オレまでコイツを見捨てたら可哀想だろうが」
去る前に、嘘つきはオレが言った言葉をオレに囁いた。
そしてにこりと笑った。
それは複雑な微笑みだった。
嬉しそうな、寂しそうな。
そして、怒鳴り続けるオレを置いて嘘つきは部屋を出て行ったのだ。
これは・・・お礼なのだ。
オレがアイツを庇ったことの。
人間ではなく、アイツと同じ化け物としてアイツといることを選んだことへの。
アイツへの同情への。
どこか寂しそうなのは多分・・・「同情」だからだろう。
アイツがオレの「愛情」を欲しがっているのは知っている。
それがアイツの「愛情」からオレを欲しがっているのかはわからないし、アイツのソレが「愛情」なんてモノなのかオレにはわからない。
でも、オレの「同情」が「愛情」とそれ程変わらないように、嘘つきのその執着も「愛情」とそれ程変わらないのかもしれない。
何であれオレはお前を思っていて。
お前と一緒にいたいんだ。
それは「愛」と何が変わるんだ?
意志を伴った「同情」がただ思うだけの「愛」なんてヤツよりいいもんだなんて誰が決めたんだ。
嘘つきがここへ戻って来るつもりなのはわかっていた。
沢山殺して、オレとあの土地へ逃げるつもりなのだ。
でもそれだけなら意志を縛って身体を動けなくしたままで良かった。
わざわざバスローブの紐で縛らなくても。
縛ってからオレの意志を解放したのは・・・。
自分がもどれなかった時のためだ。
あの捕食者に殺された場合に備えてだ。
自分が帰れなくても、オレが自由に動けるように。
オレは知ってる。
おそらく傭兵は死んだ。
傭兵ではあの捕食者を殺せないからだ。
狙い通りなら動きを封じることに成功しているはずだ。
嘘つきは傭兵は死に、捕食者の動きを少し封じれると思っていたはずだ。
つまり捕食者はやってくると。
嘘つきはまだ色々と工夫していたからだ。
嘘つきは捕食者を全くナメてはいなかった。
そしてオレを連れて行かない理由に、もうオレ達を守ってくれる傭兵がいないこともあるのだろう。
捕食者はドサクサに紛れてオレを殺しにくることも嘘つきは知っている。
あの男はオレを許さない。
オレか少年にだかれたからだ。
それに共犯者以外の何ものでもないオレを生かす理由は、オレがアイツの幼なじみである以外なく、つまり、本来はオレも狩りの対象なのだ。
だが、会場以外でオレが発見された場合、それに最初に対応するのはアイツなのは間違いなく。
アイツはオレを保護するだろう。
嘘つきはオレを守ろうとしていた。
なんにも出来ない甘えたの男は、たった一人で捕食者の来る会場へ向かう。
何も出来ないくせに!!
人を殺す以外は、だけど。
嘘つきは人を操れる。
嘘つきは姿を誤魔化せる。
でもそれは捕食者に対しては通用しないはずだ。
どうするつもりかはわからないが分は悪すぎた。
オレは容赦なく括られた紐を解こうと暴れる。
でも紐は緩む気配もなかった。
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