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祭 32

 美しい。  足の指の先まで美しい。    白い指先に半透明の爪が、まるで作り物のように美しい形でついていた。  美しいアーチを描く高い甲、足首の締まった美しさと、人間の身体の歪さがないその美しく整ったその指の造形。    思わず口にふくんでしまう。  親指をしゃぶる。  夢中でしゃぶる。  ぴちゃぴちゃと音をたてて舐めたてて、ちゅうちゅうと吸った。  歯で親指の先をこそぎ、また吸った。  与えてくださっている。  その事に股間が熱くなるのを感じた。  とっくの昔に勃っている。  この方が与えて下さっている。  男は感動のあまり涙を流す。  この方に触れても良いのは上位の、選ばれた出家信者だけだった。  それでも一度だけ、『神』がこの男の中に入るのを、信者は見たことはあった。  まだ子供の面影を残す、あどけない顔は美しくいやらしく喘いでいた。  細い腰を骨太い教祖の手で掴まれ、長い髭と濃い体毛のどこか獣じみた『神』に背後から腰をうちつけられるたび、美しい 白い背中が反り返っていた。  皆恍惚として、自分の性器を弄っていた。  これは『神』から与えられた、『恩恵』だからだ。  男にはそれを観ることしか許されなかったが、えらばれた信者達か、それが終わった後、この方に触れることを許されていることは知っていた。  『神』が放ったことにより、エネルギーを注がれた聖なる穴を舐めることが許されていたのだ。  その体液さえ与えられたのだ。  神との性行で濡れた汗をためとり、頬を流れる涙を舐めとり、その唾液を味わうために口の中に舌を入れることさえ許されて、性器から直接その精液を飲むことさえ許されていたのだ。  その人の中に放たれた『神』の精液を味わうために、信者達はその穴に指を入れ、掻きだし、舌さえいれただろう。  どれほど羨ましいと思ったか。  この方はご自分の身体を信者に与えて下さっていた。  そして今、自分に足を舐めることを許してくださっている。  男の指をしゃぶりながら信者は自分の股間のモノを取り出し擦りたてていた。  でも、気が付けは、弄っていたのは自分の穴だった。  あの女が代表になってから、長くこの身体は快楽を知らない。  密かに行う自慰だけだ。    『神』は出家信者達に説いた。  セックスのエクスタシーは凄まじいエネルギーなのだと。  その瞬間、人は人の垣根を超える力を持っていると。  快楽を伴った瞑想は出家信者のみに教えられる秘儀だったのに。  快楽を与え合い、人を超えるべくその精神を辿る。  この力をコントロールできれば、『神』のように『聖人』のように人智を超えた力を得ることができるのだ。    過去を見、未来を予言し、宙に浮く。  大勢の目の前で宙に浮き上がった『神』を見たことを思い出す。  なのにあの女は秘技を封印したのだ。    信者は苛立ちを覚える。    信者のように密かに自慰をしながら瞑想している出家信者は少なくないはずだ。  皆、あの女に不満は持っている。  教団はあまりにも変わりすぎた。  だが、行き場がなくった信者達を束ね、教団を存続させたのはあの女だ。  秘儀以外の教えを守り抜いたのも女だ。     そして、確かに超常の力を女は持っていた。  だからこそ・・・。  だから付き従ってきたが、今正当なる後継者が帰ってきた。  帰ってきたのだ。  男は自分の穴のそこを擦った。  見られていると思うだけで快楽は増した。    昔見た、聖人の美しい裸を思い、その美しい足を味わった。  「ああっ!!」  男はのけぞる。  男は久しぶりに後ろだけで達した。  美しい指を口に含んだまま。  指に歯を立ててしまった。  泣きながらその足に頬ずりする。    優しくその涙を指で拭われ男は顔をあげた。  『聖人』が微笑んでいた。    慈愛の微笑み。  この方はいつも自分の身体を信者達に与え、微笑んでおられた。   指が首筋を撫でるのに震える。  優しい指先に慈愛を感じた。  久しぶりに現れたこの方は片腕を失っておられた。  我々の元に戻るために失ったのだ。  きっと。  信者は感動のあまり涙をながす。  後ろを向くことを促され、信者は興奮に震えた。    『神』に挿入されたことは何度かあった。    選ばれた信者達にこそなれなかったが、自分の美しさには自信がまだある。   『神』は支部に来た時は男を呼んで、男と秘儀を行って下さった。    深く、太いモノで後ろを穿たれる期待に身体が震える。  長くされていない。  『神』にそうしたように自ら腰を高くあげ、尻を開いて、男は貫かれるのを待った。   深く深く穿たれたい。      「うぐっえ!!」  男は呻いた。  それはあまりにも熱くあまりにも固く、あたりにも鋭かった。    「うひぃ?」  男は自分の下腹から突き出ているものに驚く。  それは刀の刃先にみえた。  ドン    振り返った男の目に聖人の美しい足が何かを蹴っているのがわかり、その衝撃を身体に感じた。  刃先は腹を食い破り外へ飛び出していった。    血が吹き出す。  「ぐあっっ!!」  男は叫んだ。  挿れられたモノが刀であることを理解した。  その柄をさらに深く押し入れるために聖人がそれを蹴ったことも。  さらに腹からまるで生えたみたいに刀が飛び出してくる。  「な・・」  何故?    そう叫ぼうとした。  引き抜かれ、また刺された。  まるで性器でそこを出し入れするように。  男は悲鳴をあげた。   でも誰もこないことを知っていた。  ここは防音されている。  ここは本部の地下。  そう、男は今支部ではなく本部の出家信者なのだ。  あの女のおかげではあるけれど。  慈愛に満ちた目で聖人は男に微笑んだ。  苦痛にが理解に変わる。  これは、愛なのだ。  男は歓喜した。  刃物で抉られる。  何度となく刃先は腹をつきやぶる。  刃物で擦られる。  喜びながらそれを受け入れた。  男は白濁を放ちさえした。    聖人はそれを信者が絶命するまで繰り返した。  動かなくなった信者のそこに刀を挿したまま、聖人は興味がなくなったように死体を捨て置いた。    かえり血を浴びたまま、聖人は倉庫のそれを見つけだした。  そう、これ。  これでいい。  聖人は美しく微笑んだ、          

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