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祭 33

 「持って来なさい、すぐに!!」  女は慌てたように電話を切った。  僕は舞台の袖で椅子に座りながらそれを見ていた。  正しくは隣りに座るガキの膝に頭をのせながら、だ。  僕はたまにガキの太ももを撫でたり噛んだりしながらダラダラと忙しそうな信者達を眺めていた。  タキシードの上着は椅子の背にかけてある。  そう、ここでの中継はネット回線で他の会場にも繋がれている。  ネットを遮断することを女は拒否した。  そして、携帯を持つスタッフ達を何人か女は用意している。  進行のために必要だと。  犬達が説得したが女はそれを譲らなかった。  この行事は女にとって後継者であることを指し示す大切な行事なのだ。  女にとって信者の命よりその方がずっと大切なのだ。  舞台では今はまだつまらないセレモニーを行っている。  「私はこの教団によって救われた」みたいな話を在家信者で、比較的成功者が話している。  僕は面白いと思う。  この女の行った教団の改革の一つに、現世での成功を推奨したというのがある。  もちろん、従来からの教団のために全てをよこせという 路線も継続はしているが、この女はこの教団に入信することによって成功者の続するグループに入ることが出来ることをアビールしている。  こんなに成功して素晴らしい人生を送っている人達と、あなたも同じ仲間になれる。  ポイントはあなたも成功できる、ではないとこ。  成功者が仲間であることは自尊心を満足させることが出来るのだ。  この女は面白い。  確かに信者達を幸せにしているのだ。  全てを信者達から搾り取りながら。  「・・・本部で信者が1人殺された」  女が渋い顔をして報告してきた。  同じ報告を、耳に入れたイアホンから犬からも僕は受けている。  「犬、教団の連中がそこから運びたいヤツを運び出させてやれ」  僕は女に言われる前に言った。  後半のメイン、女のする説法で使う演台を本部から運びたいと信者達が騒いでいると犬は言っていた。  ただその演台が、殺された信者がいた倉庫にあったため、 殺人現場を保全しておきたい犬の部下達と信者達が揉めているのだ。  「犯人はわかってるし、今日ソイツは死ぬんだ。現場なんか保全しても仕方ないだろう・・・これでいいな?」  僕は言った。  最後の言葉はイライラしている女にだ。  女は満足して離れた。  信者が死んでも平気。  しかも刀で穴をレイプされて殺されたてるってのに。  面白い女だ。   「何故本部に詐欺師は現れたたんだ?ここじゃなくて?」  ガキが不思議そうに言う。  ガキだけは生真面目に舞台やモニターに映し出された観客席を見張っている。  「・・・必要なモノがあるんだろう」  僕はガキの太ももに顔をうずめる。  ガキの脚の筋肉は柔らかい。  ここに歯を立てたい。   ズボンの上から甘噛みする。  ガキは困ったような顔をするけど止めないし、髪を撫でてもくれる。  何度か公衆の面前でセックスしてしまってるのでちょっとしたくらいのことは嫌がらなくなった。  こんなもの慣れの問題だ。  来るのがわかっていなければ、どこかの楽屋に連れ込んで色々したいのだけど。  まあ、これはこれでいい。  セックスじゃなくてもガキと触れ合うのは楽しい。  「いつくるのかな?」  ガキは緊張しながら言う。  「詐欺師もあの女も、この祭りの主人公は自分だと思っているから一番目立つところであらわれるさ、きっと」  僕はガキが髪を撫でる感触が心地よくて目を閉じる。  信者達が僕とガキを不安げに見ているが気にしない。   彼らには、女は僕達の存在について何も説明していないのだ。     正直僕の外見は目立つし、オマケにタキシードまで着ている。  目立つことこの上ない。  ガキだって僕程ではないが外見は悪くない。  僕が選んだからね。  その上僕が髪形から服までキチンとみてやってるんだ。  目立つに決まっている。  だから、信者達はいちゃつく僕らを怪訝な顔して見ているわけだ。  「ガキ、この祭りの主人公は僕だ」  僕は髪を撫でていない方のガキの指にキスしながら言った。  「・・・あんたが?」  ガキは不思議そうだ。  「まあ、見てるんだね」  僕はガキの指にキスして楽しんだ。  ガキは優しく僕の髪を撫で続ける。  僕はのんびりそれが始まるのを待つことにした。  

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