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祭 34

 ガシャン  ガラスが砕け、オレの身体を切り裂き突き刺さる。  オレは見事にベッドサイドのガラスのローテーブルに落下した。  上手くいった。  オレは苦痛の中で頷く。     まだ両手両足は縛られたままだ。  どうやってもほどけないのだ。  アイツ普段は服も自分で着ないくせに・・・なんでこんなしっかり結べるんだよ・・・。  オレは後ろ手に縛られた手でガラスの破片を探した。    鋭い痛みを何度も感じながら、ちょうどいいガラスの破片を手で探る。  指先も手のひらも、切られていく。 背中に突き刺さった破片が痛い。  畜生!!  あんのクソヒモ野郎!!  「殴ってやる、ボコボコにしてやる!!」  オレは怒鳴りながらガラス破片を掴み、手を縛るバスローブの帯を切っていく。  ・・・上手くいかない。  ヒモより、手や指先のが切れている気がする。  「うっ・・・」   オレは呻く。  ガラスが肉切り裂くするどい痛みは、感覚さえ研ぎ澄まさせていく。    オレが人生で学んだことの一つは・・・痛みって上限ないし、モノによって種類も違うし、とにかく耐え難いってことだ!!  オレは奥歯を噛み締める。  それでも、オレは嘘つきのところへ行かなければならなかった。  オレの男の所へ。  アイツを守ってやらねばならなかった。  この世界でアイツを守ってやろうと思うのはオレだけだからだ。  強く握れば、破片は肉をくいやぶり骨に届いた。  痛みが走る。  オレは、それでもソレを強く握り、紐へと擦り続けた。  根性で手を縛る帯をガラスで切った。  脚をしばる帯は手よりは簡単に切れたが、ガラスの破片は手の平の肉や指をズタズタに切り裂き続けた。  「殴る。殴る。殴る」  オレは嘘つきを殴ることを考えてそれに耐える。  縛って犯す。  その考えは気に入った。  嘘つきかオレにしたみたいに縛って、その穴とかを堪能してやる。    一つ言えることはエロい妄想は痛みを耐える力をくれる  是非とも試して欲しい。    オレは脚を自由にした。  立ち上がり、歩けばその裸の足にガラスが突き刺さる。    だが、オレは気にせず歩く。  散々ぶち込まれた穴から嘘つきのそれが流れ出してくる。    オレはガラスの破片を身体中に突き刺し、血まみれで、おまけにケツから精液を垂れ流していた。  だがドアに向かう。  そこで立ち止まる。  この格好で外に出たら・・・すぐに捕まる。  手配されているからじゃない。  変態だからだ。    服は嘘つきが持っていってしまっている。  もちろんバスローブもだ。  オレは入り口のそばのバスルームからかろうじてのこっていた小さなタオルを腰にまいた。  鏡に映るその姿を見て泣きそうになる。  裸よりはマシかと思ったがたまらなくマヌケな姿だった。  泣けてしまった。  たった一人の身内だった母親も酒の飲みすぎでとっくの昔に亡くなったのは良かったと思う。  いくらそれ程気にかけてなかったとはいえ、実の息子がこんな姿で捕まって、そこで弱かった心臓止めるよりは。    血まみれの変態。  このまま外にでたら、会場にたどりつくのはさすがに無理かと。  このホテルから外へ出るのも難しい。    あのド助平変態ヒモ野郎!!  オレは歯噛みした。    さて、どうする?

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