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祭 39
強く抱きしめられていた。
初めて抱かれた時みたいに。
あの時、コイツが抱きしめていたのは、コイツの頭の中のあの子だったが・・・今は違う。
違うとわかった。
塞がれた唇が一度離れてオレの名前を呟いたから。
呆然としたまま、また唇を塞がれた。
抱いてくれと、頼んだ一度目も、二度目もオレからキスした。
一度目は理性がキレたアイツにガチガチ歯を当てられながら、窒息死するだけみたいな酷いキスをされた。
童貞最低。
まあ、オレも最近まで童貞だったけどね。
二度目のキスはアイツは戸惑うように応えてくれた。
でも、上手くいかなくて。
キスだけじゃなくて何にもかも。
兄弟にキスをしているような違和感をアイツは感じていたんだろう。
今されてるのは・・・オレを欲しがるようなキスだった。
厚みのある唇がオレの唇を吸う。
甘く唇を挟まれ、欲しがるように歯列を舐められた。
思わず自ら口を開く。
欲しくて。
欲しかった。
ずっとずっと欲しかった。
コレが欲しくてたまらなかった。
キスで狂った。
夢中になった。
入ってきた舌に貪るように舌絡めた。
自分から首筋にすがりついた。
舌の奥を舐められ、気持ちよさに悶えた。
注ぎ込まれる唾液をほしがりながら飲んだ。
口の中を舐めまわされ、気持ちさに呻いた。
オレもアイツの口の中を舐めまわした。
アイツの体温に包まれいた。
肌で肌を感じたくてたまらなかった。
欲しい。
欲しい。
オレは熱く硬くなった股間をアイツに押し付けようとした。
つま先立ちになり、アイツの腰を引き寄せようした。
硬くなったもの同士を擦り会わせようとして。
そして一瞬で正気にかえった。
コイツはオレには・・・勃起しない・・・。
すうっと頭の血が引いてきた。
むしろ悲しくなってきた。
無理やり顔をふり、アイツの唇から逃れた。
身体を引こうとしたオレをアイツは強引に抱き寄せた。
アイツの股間がオレの股間に押しつられた。
オレはビクリと身体をふるわせた。
だって・・・そこはオレのと同じ位・・・ガチガチだったんだ。
「何で!!」
オレは叫んでいた。
「オレが咥えてやってもお前・・・勃たなかったくせに!!」
オレは混乱して叫んだ。
アイツは照れくさそうな顔をした。
「お前を抱いたらお前との関係がこわれてお前を失ってしまう気がしてた・・・お前を失う位なら、お前を抱こうとは思えなかった」
アイツはそう言いながらオレを見下ろす。
その困ったような言い方に、何故か笑ってしまった。
すがりついてしまう。
大きな身体。
ずっとずっとこの身体に抱き締められるのを夢見ていた。
嘘でもよくて。
でも嘘で抱かれてなお辛くなって。
嘘じゃなければ欲しがられなくて辛くなって。
オレを包み込む腕。
この腕が欲しかった。
オレを抱き締めたいと思って抱きしめて欲しかった。
オレは夢中になって、自分のとアイツのを擦り合わせた。 服の布ごしに擦れあう。
ゴリゴリと擦りつける。
その存在が嬉しかった。
こんなのでだけで・・・。
気持ちいい。
射精してしまいたい。
「・・・おい」
アイツが困ったように言う。
アイツも追い詰められているんだ。
オレみたいに。
「・・・何でもしてやる。何でもだ。・・・だからもう詐欺師のところへ行くな!!」
アイツがオレを抱き締めながら囁いた。
ああ。
オレは理解した。
何かが壊れて、何かが解放された。
ああ。
お前はなんて残酷で優しい。
そしてオレをそんなにも思ってくれている。
オレを失う位ならオレを抱けない位に思ってて。
オレを失う位なら、オレを抱いてでも止めたいと思うんだ。
そういう意味では愛してなどいないくせに
酷い男。
酷い男。
ズルいズルい。
「ズルい・・・お前ズルい・・・オレがどんだけお前を欲しがってるのか知ってるくせに!!」
オレは叫んだ。
「いくらでもくれてやる!!だから行くな!!」
アイツは叫んだ。
アイツは本当に自分をオレにくれる気なのだ。
「全部くれんの?」
オレは泣きながら叫ぶ。
「全部だ!!あんなヤツのとこに行かせられるか!!」
アイツも怒鳴り返した。
壊れる位に抱きしめられる。
それはそれでも。
幸せだった。
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