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祭 41

 「お前には撃てない」  アイツが怒鳴った。  「撃てる」  オレは言った。  「・・・愛してるよ。お前はオレに撃たれてもオレを許してくれるだろ?」  オレはあの子に微笑む。  「勿論だ」  あの子は頷く。  オレは愛しくなる。  オレ達は、オレとあの子はいつからだろう。  互いを自分のように思いはじめていた。  同じ男を愛している。  それだけでは理解出来ない絆がある。  オレはお前の行けないところへ行く。  お前の世界は閉ざされているから。  オレはお前の出来ない全てのことをする。  セックスから何から何まで。  人を傷つけることも。    誰も傷つけないお前に代わり、オレは沢山傷つけ、沢山傷付く。  「オレの恋人を助けるためになら、お前はオレに撃たれてくれるだろ?」  オレは言った。  答えはわかっているのに。  「問題ない」  あの子は言い切った。   あの子は自分がずっとオレを傷付け続けてきたと思っているからだ。  オレのためなら命だってくれるだろう。    ああ、愛してるよ。  お前には勝てない本当に。   「止めろ!!」  アイツが叫ぶ。  オレがあの子を殺すなんてお前は思っちゃいない。  でも、お前には誰かがあの子を傷つけるかと思うだけでも耐えられない。  お前は泣き叫ぶあの子を組み敷いて、あの子を傷つけているくせに。  泣いてもやめてなどやらないくせに。  人がほんの少しでもあの子を傷つけることは許せない。  お前・・・ホント。  酷い男だよ。  オレはあの子の手をそっととった。  あの子は震えながらそれに耐えた。    「本当に撃つ」  オレは言った。  腕でも脚でも邪魔するなら撃つ。  オレはいかなきゃ行けないんだ。  嘘つきのところへ。  部下が近寄ろうとしたのをアイツが止めた。  あの子につく僅かな傷でさえお前には耐えられない。    「走るよ」  オレはあの子に囁いた。    オレとあの子は会場に向かって走り出した。  アイツは止めなかった。  全部わかっているからだ。    オレが会場付近であの子を離すのも、オレが嘘つきを止めるために動くことも。  ・・・だからこれはサヨナラだった。  アイツとオレとあの子の。  長く続いた歪で、それでも愛しい関係の。  終わりだった。

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