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The Show Must Go On 1
「アイツを殺さないでくれ。頼む」
スーツは懇願した。
イアホンからのスーツの声は震えていた。
情報屋が会場入りしたらしい。
あの子を人質にして。
スーツは情報屋は詐欺師と接触さえしなければ危険はないことを強調した。
あの人に言ってはいるが、俺に向けて言っているのはわかった。
あの人には何を言っても無駄だからだ。
今のあの人はすごく楽しそうだ。
ワクワクしてる。
情報屋を殺したくてたまらないのが伝わってくる。
もう少し隠した方がいいよ、と言いたくなるくらいだ。
「大丈夫。見つけたら俺が保護する。俺がまもるよ。詐欺師からも、この人からも。ダメだからね!!絶対に殺したら!!」
俺はあの人に言い聞かせるようにいう。
まあ、俺、情報屋に斬りつけられたけどね。
「・・・何故情報屋を庇う。何故だ!!そんなにアイツが心配か!!」
あの人がイラついた声を出した。
嫉妬だ。
こんな時でなければズボンを引きずりおろされて強引につっこまれるか、喉に無理やり突っ込まれる感じの怒り方だ。
俺、やっぱり酷い扱いされてるな、
他人事のように再確認した。
こうなると面倒くさい。
ややこしい。
マトモに話なんか聞かない。
「情報屋じゃなくても、誰も死んだらだめなんだよ!!・・・あんたは正義の味方だから」
俺は言い聞かせる。
正義の味方は数少ないあの人をコントロールできるキーワードだ。
その言葉の理解が俺とは随分違ってもだ。
あの人は正義の味方を自認しているからだ。
あの人は考え込んだ。
詐欺師を止めにやってくる情報屋を殺すのは正義感の味方として正しいのかを考えているらしい。
「わかった。殺さない・・・今日は」
あの人はため息混じりにいった。
小さな声で最後に付け加えたのが気になるけれど、とにかく今日を乗り切ってから考えよう。
ステージでは演壇をセットし終わり、今回の生誕祭のメインが始まろうとしていた。
代表の女の人の説法だとか。
あの人が俺に教えてくれた。
この説法の途中で面白いものが見えるぞ、と。
何のことだろう?
俺はとりあえず見守ることにした。
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