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The show must gone 6
女は自らやってのけなければならないのだ。
1000人以上の信者を自分の足元に這いつくばらせ、その足の指さえ喜んで舐めるように支配するためには、今ここで、信者達全員が見ている前で、この事態をなんとかさせる必要かあった。
ここでうまくやれたなら、女は本物の代表になるだろう。
失った神の代わりではなく、本物の神になり、沢山の奴隷を従える王となり、信者達をさらに支配出来るだろう。
僕は女に頑張って欲しかった。
だって面白いじゃないか。
人間ごときが神になろうとしてるんだよ?
本物の化け物と対峙して。
女は殺さぬように、死なぬように、信者達を使い続けるだろう。
理想的なご主人様だ。
全てを喜んで差し出しながら、信者達は女の足を舐め続けるだろう。
女が強ければ強いほど、女が全てを手にすればするほど、それは信者と言う奴隷達の喜びとなる。
凄まじいSMショーだ。
僕はサディストらしいが、こういう趣味はない。
だが面白い。
面白い。
人間とはどこまで愚かなのか。
その愚かしさに漬け込もとする女の小狡さがたまらなく面白かった。
女は武器を持つ信者達に呼びかけた。
「弟は父と共に道を違えました。それなのにあなた達は弟に従うのですか?」
女は舞台の上でよく通る声で呼びかける。
その声こそ慈愛に満ちているし、表情も優しげだが、その目だけは冷たく光っている。
女は何かを企んでいる。
詐欺師はゆっくりと女に向かって近づいてくる。
女の声や、全ての音を吸い込みながら。
付き従う信者達も取り囲むように。
女はジリジリとあとずさった。
怯えているようにも見えるが、その目の不敵さに僕はドキドキする。
続きがたのしみだ。
ガキは山刀を構えている。
瞬間で飛び込むつもりだ。
だが、困ってもいる。
詐欺師に従う信者達を傷つけたくもないからだ。
ガキは優しい。
悪者は明らかに女の方でもあるからだ。
僕に言わせればコイツら全員悪者だ。
詐欺師は「能力」としての洗脳を使ってはいない。
コイツらは勝手に新しい神として詐欺師を選んだだけだ。
幻覚も見せていなければ、誘導さえしていない。
コイツらはただ現れた詐欺師に自分から付き従い、喜ばせようと必死なだけだ。
神を選べる時点で「洗脳」ではない。
詐欺師はわかっているからわざわざここでは能力を使わない。
ここにいるのは、強い者に支配されたい生き物だけだからだ。
能力を使う必要すらない。
力を示すだけでいい。
詐欺師は女を殺して力を示せばいい。
そして女は詐欺師を殺せばいい。
そして信者達はどちらかを選べばいいのだ。
ここには救うべき善人などどこにもいない。
互いに喰らい合う醜い生き物しかいない。
女はジリジリと舞台の上で追い詰められていった。
女の頭をスイカみたいに潰すべく、信者の一人が鉄棒を振り上げる。
それを新しい出し物でも見るかのように会場一杯の信者、そして中継された映像を他の会場の信者達が、興奮しながら見守っていた。
僕の指示がない限り、犬も部下も動かない。
僕は期待した。
女の頭はパクリと割れて中身を吹き出すのか?
それはそれでおもしろかった。
「・・・お前達では私を殺せない」
女は芝居っ気たっぷりに言った。
目が異様な光で輝き、釣り上げた唇で笑う女は醜悪で、だからこそ魅力的だった。
女が手を振り上げた。
それは一瞬だった。
ぐおん
ぐおん
凄まじい音が響いた。
舞台の上の天井が崩れ落ち、ステージの上に鉄材や木材がものすごい音を立てて落ちたのだ。
信者達の頭の上に重い鉄材が落ちた。
グチャリ
スイカのように割れたのは信者の頭だった。
ごきゅ
背中に重い木材が落ちて信者の身体が背骨ごと潰れた
ぐふぇ
重い機材に挟まった信者は呻き痙攣し動かなくなった。
くずれてきた天井はステージの上で女を殺そうとしていた信者達を簡単にころした。
潰れた肉片にして。
そう、詐欺師でさえ。
詐欺師の頭は重い照明につぶされ、身体だけか残っていた。
そして、舞台の上に立っていたのは・・・女だけだった。
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