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The show must gone 11

 「愛してる」  僕は囁く。  抱きしめる。  彼の身体が震える。  「  」  名前を呼ぶ震える。  僕の愛しい彼。  僕の愛する恋人。  生まれた時から側にいた。    僕達の中では一番成長が遅く、僕達の中では一番出来が悪いと言われる彼は、僕達の中でただ一人僕達が何なのかをきちんと理解していた。  僕達が美しくても、僕達が優秀でも、僕達が淫らでも、僕達に人間達がどれだけ虜になろうと何の意味もないのだと。  僕達は飼われ見えない鎖に繋がれた奴隷でしかないのだと。  彼だけは拒否した。    セックスを嫌うことで。    奴隷にならないと。  それはいずれ廃棄処分になることを意味していたけれど・・・。  僕も彼に出会わなければ他の子達のように「人形」として生きていたのかもしれない。      残酷で冷酷な性質を生まれ持つ僕達の中で、彼だけは穏やかで優しかった。  もしも僕が君ならば、僕もこんなに優しいのだろうか。  その思いが彼に向かう。  優しくしたい。  君だけには優しく。    人が傷つくとこを楽しむ性質を超えて現れた感情は彼によって引き出された。  優しくしたい。  優しくしたい。    笑って欲しい。  彼に僕はそう願った。  僕は人間じゃない。  そんなモノにはなりたくない。  でも人形じゃなくなったのは、彼がいたからだ。  組織の医者達は僕が特異なのだと言った  成長速度、知能、全てが予想を超えていたから。    でも違う。    違うのだ。  あの同じ遺伝子を持つ同じモノであるはずの中で最も異なっていたのは「彼」だったのだ。  彼だけが最初から人形ではなく、僕に「愛」を教えたのだ。 また場面が飛ぶ  ここはどこだ。  僕は混乱する。  そこは病院の霊安室だと気付く。  嫌だ。  僕の心が悲鳴を上げる。  嫌だ。  思い出すな。    僕の心が僕を止める。  でもここはどこなのだ。    僕の記憶の中なら、僕の思い通りに出来るはずなのに。  思い出すな。  僕は叫ぶのに。  僕はナース服を着ている。  沢山殺して、工場を脱出した後だ。  僕は彼を病院に迎えにきたのだ。  彼が病院に送られることがわかっていたから。  彼を病院から連れ出し、二人で逃げるつもりだった。  二人だけで生きていくつもりだった。  「人形」なんかでいたくない。  だから僕とセックスはしないと彼は言った。  人形はセックスをするものだから。    人形は誰とでもセックスする。  だから僕だけとはしたくない。  僕を好きだからと。  でも僕達が人形じゃなくなったら?  自由になったら?  そうしたら僕に抱かれてくれる?    そんな僕の問いに彼は笑って頷いた。  彼はそんなことは不可能だとおもっていた。  そんなことは有り得ないと。  でも。  だからこそ僕は脱出することを堅く誓ったのだった。  君を僕だけのモノにするためだけに。  そして僕は脱出した。  そして彼を迎えに来た。  なのに何故か僕は霊安室にいる。  何故?  何故ここに?  君は死ぬようなケガはしていなかった。  僕は君を傷つけた。  もう最高級の人形として出荷できない程度には。   でも、決して殺すようなケガではなかった。  基準に達しない人形が「売却」されることは知っていた。  組織ではないどこかに売却されるのだろうと思っていた。  どこかの売春組織に。  だから、そこに売却される前に彼を迎えに来たのに。  何故霊安室に彼がいる?  死んでなどいなかった。  「迎えにいく」と言って彼を置いて行った。  この病院に送られることまで予想通りだった。  僕はふらふらとベッドの上のそのシーツを剥がそうとする。    ダメだ。  そのシーツを剥がすな。  剥がしてはいけない。  僕はダメだと言うのに、記憶の中の僕は・・・。  やはりシーツを剥がしてしまったのだ。  僕は慟哭する。  思い出の中の僕と共に慟哭する。  思い出したくなどなかった。  忘れてしまった。  忘れてしまったはずなのに。  僕は叫び続ける。  あの日からずっと、生きている限りこの心は叫び続ける。  忘れても、思い出さなくても、この心は僕が存在する限り、あの日のように叫び続けているのだ。  僕の可愛い恋人は殺されていた。   半日前まで生きていた恋人は、キスして別れた恋人は。  殺されていた。  生きながらに内臓を抜かれて。  おそらく角膜まで奪われて。  シーツを剥がした身体の皮膚の一部が剥がされていた。  内臓だけでなく、皮膚さえ奪われたのだ。  移植のために。  恋人は売却された。   恋人は、恋人は人形として不適格だったから臓器として売却された。  人形でなければ生きた内臓だったのだ。  僕達は。  内臓を取り出された切り開かれた跡、それを綴じた跡。  僕は何もかもを悟り僕は悲鳴をあげた。    僕が心から愛した恋人は殺された。  人間ではないから殺された。  人形ではなくなったから殺された。  彼の優しい笑顔も、笑い声も、震えながらそれでも逃げずに全てをみる眼差しも。  僕の世界で一番価値ある全てを、無価値だとして、人間は彼を殺した。  殺した。  殺した。  殺した。  殺された。    僕の。    僕の。  僕の。  僕は叫ぶ。  叫び続ける。  二度と戻ってこないものを簡単に奪われたから。  僕の心は永遠に叫び続ける。        

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