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The show must gone 19

 「思い知ったよ・・・お前が彼に会わせてくれて。そんなことは思いもしなかったよ・・・ずっと思ってた。彼が生きていたらって・・・でもそんなこと望んじゃいけなかったんた」  あの人は苦しげに言った。  「彼が生き返ったところで!!今のこの僕を愛してくれるわけがないだろう!!」  あの人は叫んだ。  それは痛切な叫びだった。    ああ。  それは俺にもわかった。  「彼」を愛していた時、まだこの人はこの人ではなかったのだ。  どんなに残酷で冷酷であったとしても、それでも、今のこの人ではなかったのだ。   人間を拷問し、死体を犯す、苦痛を楽しむ悪魔ではなかったのだ。    「彼」の愛したあの人はもうこの世界にはいないのだ。  生きながらにして、人はいなくなる。  年月は人を全く違う何かに変化させてしまう。  それは捕食者になったことよりも大きな変化だったはずだ。  捕食者になる前に、もうすでにこの人は化け物だった。  人間の血と苦痛を笑いながら食らう化け物だった。  「だからって僕が彼を手放せるわけがないだろう?・・・なら、僕は彼を閉じ込めるか、殺すしかないじゃないか!!」   あの人は叫んだ。  あの人は手放さない。  あの人は凄まじくわがままで貪欲だから絶対に手放さない。  もし、死んだ恋人が蘇って、あの人の化け物ぶりに怯えて逃げようとしても、そんなこと許さない。  ここまで血みどろになったあの人は残酷さをかくすことも出来ない。  怯えて逃げようとする恋人をどうするのかは・・・、わかった。  そう、心を殺してでも閉じ込めるか、身体を殺して逃がさないようにするか、だ。  「・・・ちょっとまて、その場合俺はどうなるんだ!!」  俺は納得してる場合じゃなくて叫んだ。  昔の恋人が蘇って、あの人がその人を閉じ込めるなり殺すなりしている間、現在の恋人である俺はどうなるんだ。  待て、これは聞き捨てならない。  あの人は突然沈黙した。  焦ってる?  なんだ、その目の泳ぎ方は。  「・・・仮定の話だよね。とにかく、死んだ人は生き返らないからね?」  ごちゃごちゃ言い出したぞ。  「いや、その場合の俺の扱いについては聞いて置きたい」  俺の目は据わっていたとおもう。  この辺はいい加減にしないぞ。  「それは、とにかく、また・・・後でゆっくりね?」  あの人は異様な汗をかきながらそう言った。  「とにかく僕は、だ。『彼』が蘇ることを望まない。彼にもう一度会いたいとさえ思わない。・・・嫌われる位なら、ずっと死んでいて欲しい。ゲス野郎。お前は僕の密かな望みまで殺したんだよ!!」  あの人は詐欺師にむかって静かに言った。  とても静かだった。  この人の望みが殺されたのがわかった。  もう一度愛する人に会いたい。  そう願うだけの想いさえ、この人が手放したことがわかった。    「だから・・・もうお前は僕を支配出来ないんだよ」  あの人は淋しそうに笑った。  愛する人に願うのだ。  生き返って、自分を嫌う位なら死んでいて。  あの人の臆病さが見えた。  嫌わないで。  捨てないで。  逃げないで。  悲鳴のような願いが見えた。  その為なら、永遠に殺すことさえこの人は出来るのだ。  哀れな人。  弱い人。  俺の・・・愛しい人。    この人は愛した人に嫌われたなら・・・本当に壊れてしまう程、弱い人。  残酷で冷酷で、暴力の限りをつくしながら、あんたはそんなガラスみたいな心を必死で抱えてる。  どうかしてるのは俺だ。   あんたは最低だ。  いつだって。  俺を前にして違う誰かへの愛を語るのか?  でも、あんたのそのひどさや脆ささえ・・・愛しいとおもってしまうんだから仕方ない。  抱きしめたかった。    俺だけは絶対にあんたを嫌わないと抱きしめて言い聞かせてやりたかった。  俺はガキで。  バカで。    でも・・・どんなあんたでも、あんたからは逃げない。  今、ほかの人への愛を隠そうとしないあんたでも。    

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