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The show must gone 21

あの人はさすがに信者達の手足をぶった斬るのは止めてくれた。  すごい・・・と思った。  流れるようにあの人の手足は動く。  掌底と言われる、手のひらの付け根を手首に直角に立てて、それで我先にと飛びかかってくる信者の顎を確実に打ち抜く。  一撃で信者達は動きを止める。  脳を揺らして、気絶させているのだ。  あの人のつま先や、脚の甲が顎や首をとらえ、脳を揺らす。  あの人は踊るかのように動き、たった一撃で信者達を止めていく。  身体がしなう。  美しく最短で動く。  呼吸一つ乱さない。  まるでダンスのよう。  信者達の脳を揺らし一瞬で気絶させる。  それ程激しい衝撃ではないが、確実に10数秒は意識を失う。  そして、信者達は気がついても、ぼんやりとしていて再び襲いかかってはこないのだ。  俺がやった脳への再起動をあの人は実にスマートにやっているのだ。  俺は・・・。  俺はスマートとはいかなかった。  肩や腕は何カ所も食いちぎられてるし、沢山のヤツがのしかかってくるし・・・。  俺も腕とか脚とか何人も折ってるし。  手加減しているつもりだけど、あの人と違って俺が「再起動」させた信者達はまだ誰も起きてこないから、死んでしまったんじゃないかと心配だし・・・  でもこれではダメだ。  あの人相手だから脳の機能が完全に停止出来る位殴れた。  でも人間相手では・・・一時的に停止してるだけだ。  詐欺師の洗脳が本当に抜けたかもわからないし。  「なんとかして!!」  俺はあの人に叫んだ。    そう、結局のところ・・・あの人に頼るしかないのだ。  あの人のズル賢い頭脳に。  「殺さず、助けろ・・・か。・・・コイツらにそんな価値があるかな」  あの人は呟いた気がする。  俺はのしかかってくる信者を掴んでなげる。  腕の肉を違う信者に噛みきられながら、頭を殴って気絶させる。  「・・・お前の願いだからな」  あの人はそう言った気がする。  あの人はふわりと飛んだ。  群がる信者達をすり抜け、踏み台にして、まるで体重がないかのように浮き上がった。  トン    軽い足音を立ててあの人がおりたったのは詐欺師の隣りで、詐欺師の肩を揺さぶり怒鳴っている情報屋の前だった。  ああそうだな。  詐欺師は殺されたって洗脳を解かないだろう。  なら、詐欺師に言うことをきかせるために痛めつけるなら・・・情報屋の方だな。  いや、考えることがエグい。  あの人らしい。  でも・・・情報屋が痛めつけられるのは嫌だけど・・・このままだと信者達は死ぬ。    殺すのは信者を止めるため殴っている俺かもしれないし(意外とあの人は手加減が上手いので大丈夫そう)、信者達同士の殴り合いからかもしれない。  とにかく早く洗脳を解く必要があった。    あの人が舌なめずりしながら情報屋に近づく。   そうだ・・・、あんた、情報屋を殺したかったんだっけ・・・。  さすがに今は殺さないけれど、酷い目には喜んで合わせるよな。  そらもう、大喜びで。  俺はもうどうすればいいのかわからない。    情報屋は、詐欺師に止めるように怒鳴っていたのだと思う。  聞こえないけど。  でも、今は恐怖に目を見開いた。  情報屋にも自分がどうなるかわかっていた。  キラキラした目であの人が情報屋に近づく。  皮をはぐのか、指を斬るのか、鼻を削ぐのか。  ふっと詐欺師が情報屋の前に立ちふさがったが、まぁ、無駄だろう。  詐欺師は普通の男程度の戦闘力しかない。  情報屋はあの人にいたぶられるだろう。  詐欺師が洗脳を解くま・・・、  ええ?!  俺は驚いた。  詐欺師は庇うのではなく、あの人を襲うため群がってくるステージ下の信者達の群れの中に情報屋を突き落としたのだ。    「うわぁぁああ」  情報屋の悲鳴が聞こえた。  俺やあの人のように直接狙われはしないが、踏まれ揉まれ殴られ、群れの底へと沈んで見えなくなった。  普通の人間なら死んでる。  ボキボキに体中の骨を折られて。  「・・・逃がしたな」   忌々しげにあの人が言ってた。  えっそうなの?  俺は信者を気絶させながら思う。    「うわぁぁああ」  情報屋は悲鳴だけ聞こえる。  ええ・・・これ逃がしてるの?  でも、あの人にいたぶられるよりは・・・まし、なのか。  確かに、信者を掻き分けて情報屋を引き出すのは大変そうだ。  

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