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The show must gone 26

 「乱暴は止めて・・・」  俺は言いかけたけどあの人は目だけで俺を止めた。  何?  何なの?  何するの?  「僕ははね、お前が結構気に入ってたんたよ?・・・女にしては僕好みだ」  あの人は妖しく女の人の耳元に囁く。  冷酷で綺麗な顔が近づけられる。  それはキスの距離だった。     ほんの僅かで唇か触れる距離であの人は、その綺麗な目でおんなの目をのぞきこんだ。    女の人も思わず顔を赤らめて・・・って、何?  なにしてんの?  「・・・なっ!!」  俺は言葉を失う。  何してんの。    何してんの。  俺の目の前で。  さすがにカッとなった。  「・・・ホント残念だよ」  あの人はため息をついた。  あの人の吐息に女は恍惚とした。  あの人は吐息ですら甘い。  血しぶきが上がった。  女の人の首はあの人の手の中に、胴体の方はステージの上にゆっくり崩れ落ちていった。  あの人の右手の刀が血に濡れていた。  「・・・お前はゆっくりいたぶりたかった。本当に僕好みの素敵な悪党だったのに」  あの人が悲しげに髪を掴んでぶら下げていた女の人に話しかけた。  女の人は何が起こったのかわからない。  そんな顔をしていた。  俺も、俺も、  分からない。  なんで?  信者達はぽかんとそれを見ていた。  あの人はその首をステージから信者達に向かって投げた。  信者達は悲鳴をあげよけた。  座席の間をコロコロと首はころがって、上をむいたまま、天井を睨んでいた。  「お前らの大事な代表なのにいいのか?」  あの人は無邪気に笑いながら言った。  あの人は続いて詐欺師の襟首をつかんでステージ中央にひきずってきた。  そして右手の刀で首をはねた。  血しぶきを上げて詐欺師の身体と首は離れた。     いや、そんなことをしても意味がない・・・。  あの人はその胴体と首を、隠し扉から、演壇の下の隠し部屋に放りこんだ。  そして扉を締めた。  あの人は血まみれの手を伸ばす。  刀から腕に戻していた。  両手をのばして、その血を示す。  女の人と詐欺師の。  「二人とも死んだ。僕が殺した。お前達はどこへでも行くかいい」  血まみれのタキシード。  血まみれの手。  美しい男。  いつの間にか、ステージの中央のあの人に光の輪があたっていた。  ライトがあたっているのだ。  そしてあの人は優雅に礼をした。  遠い昔の殺戮を好む貴族の役を演じているかのように。  それは残酷で、夢のように美しい光景だった。  あの人がパチンと指を鳴らしたら、ステージの幕がゆっくりと降りていく。     そんな仕掛けをいつの間に・・・。    スクリーンにはそんなあの人が映し出されていった。  ・・・ショーは終わったのだ。  

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