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もう1つのエンディング 9
やりやがった。
僕はさすがに驚いた。
する気はないが、僕でさえ自刎なんか出来る気もしない。
それを、チンケな情報屋風情がやってのけた。
僕は驚いた。
驚いていた。
犬は見えない目で狂ってように叫び続けているし、ガキは情報屋の首を抱えて泣いてるし。
ああ、面倒くさい。
ガキをどうなぐさめればいいものか。
ああ、面倒くさい。
僕は慰めるとか・・・出来ないんだよね。
ベッドで優しくしてやる位しか・・・。
オマケに。
僕は詐欺師の方へ目をやった。
詐欺師は静かに泣いていた。
幸福そうな笑顔を浮かべていた。
幸せか。
そうだな、幸せだろ。
今お前は愛する男の全てを手に入れた。
情報屋が本当にお前を愛していたとは思えない。
だが、情報屋は今「愛」以上のもんをお前に示した。
ここまでされたなら、もうそれが本当か本当じゃないかなんてどうでもいいよな。
ああ、つまらない。
ああ、人間をバカにしてはいけない。
バカにしていたせいで・・・・。
僕は右手を銃に変えた。
詐欺師は僕を見ようともしなかった。
詐欺師は自分にとって最高に幸せな風景を見つめ続けていた。
愛しい男の切り離された首と身体を。
「邪魔だ、のけ」
詐欺師の両脇にいた犬の部下達に命令した。
部下達は素直に退いた。
詐欺師はそれでも動こうとはしなかった。
ただ、涙を静かに流し続けていた。
満ち足りた笑顔で。
美しい。
全てを許す聖人のような顔だと思った。
確かにそう思った。
僕はその顔を撃ち抜いた。
上半身がすべて消し飛んだ。
僕の銃は撃ったものを直径50cmの球状の範囲を消し去るのだ。
頭を無くしても詐欺師は動けるはずだが、詐欺師の身体はもう動こうとはしなかった。
次撃てるようになるには10分かかる。
あと二回撃てば詐欺師はこの世界から完全に消え去るだろう。
僕は詐欺師で楽しもうと思っていたことを考えて、ため息をついた。
仕方ない。
仕方ない。
僕は約束は守るのだ。
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