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約束の場所 3
沢山の死。
沢山の死を食べた。
教団を離れてさ迷ってみた。
大抵、誰か面倒を見てくれる人間を捕まえて、ソイツに手伝わせてたまに殺しを楽しんでいた。
人間同士を殺し合わせるのが好きだった。
でも、まだ頻繁にはしていなかった。
金を稼ぐ合間にたまにだ。
教団で学んだノウハウで金を稼ぎ、殺しは趣味の範囲でしていた。
一人は好きじゃなかった。
身の回りからセックスまで面倒をみてもらうのが好きだ。
そういう人間はすぐみつかった。
「あなたは美しい」
そいつらはそう言った。
すぐに挿れさせてくれて、世話してくれて、甘やかせてくれて、殺し合わせた人間の始末もしてくれた。
飽きたら、殺した。
精神的に追い詰めて自殺させるのが好きだった。
そしてまた別の誰かを探した。
嘘しかつけないことはなにもこまらなかった。
誰もがその嘘を信じてくれるから。
誰もが簡単に心を明け渡してくれる。
誰も心の中に風景を持っていないのだと知った。
誰にも踏み込ませない、広い空や大地を。
人間はつまらないと思った頃に、そう化け物になった。
ある日突然、化け物になった。
文字通り。
救世主、聖人と言われた者のなれの果てとしては面白いと思った。
丁度良かった。
人間には飽きていた。
色々便利な能力も手に入ったし。
セックスより殺しが好きになった。
元々、セックスは食事位の感覚でしかない。
食べないですむならいいししないでいいならセックスもそれでいい。
食欲も無くなったし、セックスもそれほどしたくなくなったけれど大した問題はなかった。
殺しだけは前よりも激しい欲求を感じるようになった。
手に入れた能力を使って、殺し続けた。
化け物になってからはセックスした相手は殺すようになった。
一人でもいいと思うようになっていた。
人間は一緒にいるより殺す方がいいと。
たまにセックスしたら、それが終われば自殺させた。
死ぬところを見るのは面白かった。
どんなに幸せそうに死んで行っても最期の瞬間に、その目に焼き付く幽かな怯えが好きだった。
金も稼いだ。
その金で準備をしようと思った。
あの場所へいく準備を。
幼い頃に自分自身にした約束だった。
殺して殺して殺して稼いでいくうちに、思い出した。
まだ怒りの清算をしていないことを。
破られた小さな手の平サイズの空と大地。
許さないと思ったことを。
【神】は殺した。
後はあそこにいるアイツらだ。
殺さなければ。
「あなたは美しい」
そう言いながら、彼らはちいさな大地と空さえ許さなかったのだ。
跪き、自分の願いを押し付けながら、肉体を貪りながらそんなことさえゆるさなかったのだ。
ああ、殺そう。
縛り付けていた全てを殺しきって・・・身軽な身体になってあの土地へ行こう。
そう決めたのだ。
大掛かりな計画を立て始めた。
今度ばかりは自分でしなければならないことが多かった。
そしてそんな頃に彼に出会った。
というより、彼を捕まえたのだった。
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