274 / 275
出口の無い部屋 3
細い首。
触れて唇をそこに落としたいと思った。
これは彼女じゃない。
彼女じゃない。
でも。
指が伸びてしまった。
そっと撫でた。
触れて撫でたなら、ピクリと震えた。
指でなぞった。
執拗に。
「はっ・・・」
かすかな喘ぎ声。
現実の彼女では有り得ない反応に頭がおかしくなる。
これは彼女じゃない。
これはオレの可愛いアイツだ。
迷惑ばかりかけてきて、甘えてばかりで、生意気ばかり言う、それでも可愛いアイツだ。
次は何しでかすんだといつもイライラさせられるアイツだ。
「・・・オレはお前が可愛いんだ」
私は呻くように言った。
代わりに抱くような真似など出来ないと言いたくて。
そういう風には愛せない。
確かに今のお前の体には反応している。
ではそれは、彼女に似ているから。
彼女を思わせるからだ。
「抱いて。そしたら諦めるから・・・全部なかったことにするから!!」
アイツが振り向き叫んだ。
その言葉が私の理性を焼き切った。
抱いても抱かなくても、アイツを失うことを私はおそれた。
アイツが好きだった。
それが恋でなくても。
アイツを失うことがいちばん怖かった。
アイツは言った。
抱いたなら・・・いつも通りになるのだと。
全てなかったことにするのだと。
アイツを失わないですむのだと。
どんな言葉より・・・甘い誘惑だった。
アイツを失うことなく・・・彼女を抱ける。
そう、どのみち、本当の彼女の身体も・・・女の身体も実際には知らなかった。
どこか似てるそれだけで十分だった。
「キスは・・・して欲しい。目を閉じたら・・・わかんないだろ」
アイツが私の視線に怯えながら言った。
アイツにどれだけ解っていたのかそう思う。
獣のような男の性欲を。
私は獣のように喉を鳴らした。
夢の中で彼女を前にしてそうしたように。
背中を向けていた身体を乱暴に前にむけた。
薄い白い彼女のようにふくらみのない胸。
淡い乳首に興奮した。
喰らいたい。
そう思った。
目を閉じた。
顎をつかんで唇をただ乱暴に押し付けた。
そこからは、無我夢中だった。
酷いことをしたとしか言えない。
ただ、貪った。
押さえつけていた性欲を叩きつけただけだ。
白い胸に淡くある乳首を吸った。
夢に見たように。
舐めた。
「あっ・・・」
小さな声をアイツが零した。
その声の甘さに痺れた
震える身体や、零れる声に何かがどんどん壊れていく。
欲しい。
もっと欲しい。
飢えた。
まだ甘かった声は、血が滲むほど乳首をかんだ時、悲鳴に変わった。
悲鳴と血は甘く脳を痺れさせた。
自分が・・・恐ろしい人間だと知った。
彼女やアイツを傷付けたいなんて、思うことさえできないと思っていたのに。
何のことはない。
傷つけてでも、欲望を叶えたがる獣でしかなかった。
ズボンを乱暴に引き下ろした。
「後ろから・・・」
小さなアイツの声は聞いていた。
それは守った。
アイツの背中から立ったまま腰を抱いた。
小さな白い尻に興奮し、その小さな穴にいきなり無理やり押し込んだ。
引き裂きながら。
慣らしもしない。
濡らしもしない。
そんな知識もなかった。
ただそこに挿れることは知っていた。
引き裂きながら動いた。
貪る肉の甘さに声をあげ、腰を叩きつけくらいつくした。
涙をこらえ、感じているフリまでするアイツの痛々しささえ、欲情に変えた。
あの子の名前を叫び、本能的に逃げようとする腰を押さえつけ、流れる血で動きやすくなったそこで遠慮なく、立ったまま後ろから思うまま突いた。
床に寝かせることさえ考えなかった。
獣のように吠えた。
気持ち良かった。
気持ち良かったのだ。
中で放ち、また動いた。
とうとう崩れ落ちたアイツの尻をつかんでもちあげ、さらに深くえぐった。
抉るだけえぐったなら、また吐き出した。
そして、また動いた。
たまらなかった。
好きなだけ動き好きなだけ出した。
止まらなかった。
自分さえよければ良かった。
欲望を放つ快感に酔いしれた。
哀れに背中を強ばらすアイツに僅かなあわれみさえ与えなかった。
アイツは本当に分かっていたのか?
それは今でもおもう。
あんなに酷い男に抱かれるなんて思ってもいなかったんだろ?。
それでも何故・・・愛してくれたんだ?
あれからもずっと。
こんなにも酷い男を。
「 」
アイツの名前を呼んでいた。
私は彼女の前で崩れ落ちていた。
泣いていた。
顔を覆い床に崩れ落ちる。
何故私なんだ。
「 」
アイツの名前を叫ぶ。
お前は辛かったか?
私なんかを愛していて。
私は辛かった。
辛かったんだ。
・・・お前を愛せないことが。
私だって・・・、
オレだって・・・
お前を愛したかったんだ。
出来るならそうしたかった。
そうしていたなら、オレは・・・お前をあんな男と行かせないですんだのか?
オレは床を叩いて泣いた。
それでも、オレは。
どんな形でも手放したくなんかなかったのだ。
ともだちにシェアしよう!