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透明な少年

それから、一日一時間と言ったはずのサボりは段々段々時間が延びていき、今では三時間くらい、3つあるベットの片隅を陣取っている。 約束とちげーぞと放りだしてもいいけど、体が弱いことは本当らしく、いつもと変わらないへらへら顔を真っ青にして倒れ混むようにベットに落ちることが多々あるからできずにいた。 休み時間になると迎えに来る佐久本曰く『寝不足』らしいのだが、たぶん栄養失調もだろう。 折れそうなほどの華奢な体や、青白い肌が示している。 「せんせー?オレ部活まだ決めてないんだけどさー。幽霊部員が一番多い部活ってなにかなー?」 そんな教育者の気も見ず知らず、生意気なガキはいつものようにのんびりとした口調でベットにうつ伏せながら尋ねてきた。 「お前は体育会系の相撲部にでも入って肉つけろ」 「やぁだー。もっと楽できる週一出ればいいくらいのさー、むしろ行かなくてもいいくらいの部活がいいー」 俺、一応教師なんだがな。 ウトウトと、眠たそうにあくびなんかこいてやがる。 「まぁ、うちの部は俺が滅多に見に行かねぇから真面目にしてるやつと、来ねぇやつ半々なんじゃねぇの」 思ったことをついボソッと呟くと、アンジェリーは何の部かも聞かず『じゃあそこで』と、適当に決めていた。   「せんせーが顧問な部活あるなら教えてよー。よかったーこんなてきとーな人がやってる部活がちゃんとあってー」 「聞こえてるっての」 「ちなみになに部ー?」 呆れてため息しかでない。 こんな自分のことに適当な奴、みたことない。 甲斐甲斐しく世話を焼いてる佐久本を尊敬する。 「弓道部」 「きゅうどー?あーゆーいちがアーチェリーみたいなスポーツがあるって聞いたことあるかも。あははっ似合わないねぇー。でも楽そう。けってー」 『じゃあさっそく、明日入部届け持ってくるから』と、さっきからウトウトとしていた重たいまぶたを言葉を発しながら閉じていく。 そんなアンジェリーを見ていたら俺まで眠くなってきたので、仮眠をとることにした。 仕事はって?ここは俺の部屋も同然だからいんだよ。 今は病人とかいねぇし。 今までは人がいるときに寝るとかあり得なかったけど、こいつは人に気を使わせないというか。 いてもいなくても変わらないような、透明な雰囲気がある。 だから、こいつに至っては例外だ。 病人でも怪我人でもないわけだし。   そう納得して、俺もアンジェリーの隣のベットに入り、春の暖かな風の中デスクに頬杖をついてまぶたを閉じた。

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