12 / 594

透明な少年

─────── 一度目を覚ましたけど、暖かい温もりに包まれた気持ちよさに抗えず、珍しく二度寝をして、ようやく起きたのは日が完全に真上に上がりきったあとだった。 せんせーはまだ起きる気配はなく、ガッチリとオレをつかんですやすやと寝ている。 動けないながらにもなんとか壁にかけられた時計から今が昼の1時だと言うことはわかった。 ありえない。下手したら10時間以上寝てる。 「せんせー?おきてよーぅ」 なんとか右手を毛布の外に出すことに成功し、せんせーの高い鼻をぎゅっとつまむ。 「……ん……」 ようやく目を覚ましたせんせーににこっと笑ってみせた。 「おはよー。千せんせっ」 下の名前でいたずらっぽく笑うと、せんせーは驚いたように僅かに目を見開いた。 「なんでお前が俺ん家にいんだよ?」 「残念。ここはオレん家。せんせー昨日間違えてお酒飲んじゃって倒れたから店のすぐ近くのオレん家で休ませることになったのー」 「…………………」 起き上がって説明すると、思い出したように髪をかきあげ黙り混んだ。 「気分はどう?体調悪くない?」 「ああ…」 「ちょっとまってね。お水とってくるから」 ベットから抜け出し冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと、グラスと一緒にもう一度寝室に戻った。 「はい、お水」 「サンキュ」 せんせーは気まずそうにしてるけど、オーダーを間違えた店側のミスだし、何よりいつ校則も法律も破ってバイトしてたことを言われるんだろうと、気まずいのはオレの方。 「いっとくけど、オレはソファで寝ようとしたのにせんせーが引っ張って放さないから同じベッドで寝てたんだからねー?」   笑顔は崩さず、恩着せがましく罪悪感を増やすことを言っておく。バイトの話の時少しでも罰が軽くなるように。 とはいえ、何となく気まずく、逃げるようにキッチンに戻った。 冷蔵庫の中を確認して、ごはんのメニューを考える。あの量で二日酔いはないと思うけど一応倒れたわけだし胃に優しいものにしなきゃ。 結局、ゆーいちの家で教えてもらった卵の雑炊にすることにして、細かく切った野菜とご飯と調味料をいれて鍋に蓋をし弱火でしばらく放置。 ゆーいち曰く、体調が悪い時、日本ではこれと決まってるらしい。 10分もかからず終わらせてしまい、まだ寝室に戻るには気まずさを克服できずにいた。

ともだちにシェアしよう!