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後戻り
千side
犯されそうになったあとも、傷だらけになってイギリスから戻ってきたときも、感情が欠落してるんじゃないかと思うくらい、いつも飄々と笑うやつだった。
そいつが、いつもの様子でなに食わぬ雰囲気のままいきなり好きだと言い出した。
なんの冗談だよと思った。
それと同時にめんどくせぇ、とも。
けど、アンジェリーが今までにない今にも泣きそうな表情を一瞬見せて、すぐに笑い離れていった。
なんだ今の。
もやっと体が重くなる。
俺に言い寄ってくる大概の女は、最終的にはどうしてわからないんだと、ヒステリックに泣く奴が大概だ。
男に言い寄られるのだって、初めてじゃないけど。
その、どいつらとも違う。
何があっても笑ってた奴が、付き合って、と言うわけでもなく、好きだとだけ言ってなんで泣きそうになってんだ。
しかも、そのまま涙を見せることはなく、笑顔を作って離れていくし。
本当に、意味がわからない。
あいつの気持ちに応えるつもりは毛頭もないけど。
泣いていてはほしくないと柄にもないことを思ってしまい、ため息をついた。
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