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妬み
累side
僕は、一年前とても嫌なことがあってずっと学校にいかなかった。
でも、養護教諭の月城千先生が、何度も何度も家に来ては、学校に来いとも言わず、他愛もない話と僕のリストカットの手当てだけをして帰っていく。
そんな日々を重ねるうちにこの人に会うためなら、保健室にだけ、行こうと思えた。
それから、少しずつ幽霊部員だった部活だけとか、一日のうち一時間だけとか、一週間に3日くらいは学校に来れるようになった。
僕は、先生にとって特別な生徒なんだと、思っていた。
それが余計に嬉しくて、少しずつ学校にいる時間が増えていった。
それなのに、合宿のときルリくんが現れてそんな自信にヒビが入った。
人一倍白い肌に、華奢な体。
綺麗なプラチナブロンドの髪に、睫毛まで色素が薄くて、日本人離れした美しさがある一人の生徒。
そんな容姿だから、周りがぼそぼそと噂していたのが耳に入った。
"保健室のサボり姫"
先生は人気だし、サボり姫はにこにこしながらも消極的だだったから、そんなに親密にしてる様子はなかったけど。
僕が学校を休んでるうちに、そんな通り名がつくほど、こんなにも綺麗な生徒が先生のそばにいたなんて。
そう思うと絶望的な気持ちになり、また僕は学校にいかなくなった。
そうすればまた先生が家に会いに来てくれると思ったから。
でも、先生が前のように頻繁に家に来ることはなく、一週間に一回くらいになってしまった。
もしかしたら、先生は僕の下心に気付いたのかもしれない。
意を決して、久しぶりに学校に来てみると、サボり姫と居合わせてしまった。
最悪だと、思った。
へらへらして、体調も悪くないなら保健室に来ないでほしい。
でも、それは僕も一緒だから、なにも言えない。
サボり姫は僕のそんな気持ちに気付くことなく、にこにこと話しかけてきた。
名前はルリ君というらしい。
片言にしか話さない僕の言葉に顔をしかめることもなく穏やかな笑顔で優しく話してくれる。
ああ、悔しいことにいい人だ。
目の前で先生と仲良さそうに話す姿にモヤモヤする。
更に、僕に友達がいないのを知ると、一緒にご飯を食べようと誘ってくれた。
いい人。
でも、好きになれない。
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