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妬み

昼休み、本当にルリくんはご飯をもって保健室に来た。 言葉の遅いぼくの話をにこにこと聞いて、話を広げてくれる。 さらに、帰る方向が同じだとわかり、今日一緒に部活に行って、一緒に帰る約束までしてくれた。 変なの。今まで部活になんて、強制参加の合宿にか来なかったくせに。 どうせ、先生へのポイント稼ぎなのだろうと思う。 部活中、めったに来ないルリくんは部長のお気に入りだった。 それ、セクハラだろうと思うような指導も、ルリくんは笑顔を崩すことなくされるがまま。 気持ち悪い。 この人、触られるの嫌じゃないのかな。 きっと人の痛みに鈍感なのだと思う。 部活が終わり、着替えていると携帯がないことに気づく。 「ルリ君、携帯、忘れてきちゃったみたいで……」 「あらー。どこにかわかる?一緒に探すよー」 「大丈、夫。ルリ君は着替えてて…」 普段袴なんて着ないルリ君は、着替えるのに手間取っていた。 僕はさっさと着替え終わっていたし、今日は保健室にしかいなかったからあるならそこだろう。 たぶん、ルリ君が着替えるまでに戻ってこれる。 「そう?じゃあ、はい。オレのケータイ渡しとくねー。鳴らしながら探したらすぐ見つかるよ」 なんの抵抗もなしにすんなり携帯を渡される。 いい人アピールすんなし。 友達なんてみんな裏切る生き物なんだから。 「……ありがとう」 「はーい。いってらっしゃい。オレも着替え終わったら向かうねー。保健室でしょー?」 「あとで…ね」 ルリ君に背をむけて、校舎に向かう。 ルリ君は優しい。 今まで部活も先生が来たら一番僕を気にかけてくれるから、その優越感を感じたくて来ていただけだし、友達なんていなかったから周りが仲良さそうに活動してる中、一人、隅でゴム弓をしてるだけだった。 だからルリ君が今日は来て、一緒に初心者用のゴム弓してくれたから、少し心強くはあったけど。 僕はもやもやしたままだった。 ………だって、寂しい思いをしてないと、先生が心配してくれないじゃん。 そう思ってしまう僕は、やっぱりずるいかなぁ。

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