33 / 594
妬み
昼休み、本当にルリくんはご飯をもって保健室に来た。
言葉の遅いぼくの話をにこにこと聞いて、話を広げてくれる。
さらに、帰る方向が同じだとわかり、今日一緒に部活に行って、一緒に帰る約束までしてくれた。
変なの。今まで部活になんて、強制参加の合宿にか来なかったくせに。
どうせ、先生へのポイント稼ぎなのだろうと思う。
部活中、めったに来ないルリくんは部長のお気に入りだった。
それ、セクハラだろうと思うような指導も、ルリくんは笑顔を崩すことなくされるがまま。
気持ち悪い。
この人、触られるの嫌じゃないのかな。
きっと人の痛みに鈍感なのだと思う。
部活が終わり、着替えていると携帯がないことに気づく。
「ルリ君、携帯、忘れてきちゃったみたいで……」
「あらー。どこにかわかる?一緒に探すよー」
「大丈、夫。ルリ君は着替えてて…」
普段袴なんて着ないルリ君は、着替えるのに手間取っていた。
僕はさっさと着替え終わっていたし、今日は保健室にしかいなかったからあるならそこだろう。
たぶん、ルリ君が着替えるまでに戻ってこれる。
「そう?じゃあ、はい。オレのケータイ渡しとくねー。鳴らしながら探したらすぐ見つかるよ」
なんの抵抗もなしにすんなり携帯を渡される。
いい人アピールすんなし。
友達なんてみんな裏切る生き物なんだから。
「……ありがとう」
「はーい。いってらっしゃい。オレも着替え終わったら向かうねー。保健室でしょー?」
「あとで…ね」
ルリ君に背をむけて、校舎に向かう。
ルリ君は優しい。
今まで部活も先生が来たら一番僕を気にかけてくれるから、その優越感を感じたくて来ていただけだし、友達なんていなかったから周りが仲良さそうに活動してる中、一人、隅でゴム弓をしてるだけだった。
だからルリ君が今日は来て、一緒に初心者用のゴム弓してくれたから、少し心強くはあったけど。
僕はもやもやしたままだった。
………だって、寂しい思いをしてないと、先生が心配してくれないじゃん。
そう思ってしまう僕は、やっぱりずるいかなぁ。
ともだちにシェアしよう!