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優しい手

保健室に戻ると、折山が泣きそうな顔で駆け寄ってきた。 「先生……っ」 体は見られないように白衣をかけてるけど、傷だらけの顔は誰の目から見ても何かあったことが一目瞭然だ。 「折山、今日悪いけど一人で帰れるか?明日また何があったか聞くから」 折山が悲しそうに頷く。 さっきまで過呼吸を起こしてた奴をそのままにするなんて普段の俺ならあり得ないことだけど、アンジェリーの体をなんとかしてやることが最優先だった。 あいつらと鉢合わせしないかと一瞬思ったけど、そこはさすがに自分で避けれるだろうし、あいつらも俺にバレたばかりでそれどころじゃないはず。 折山が小さく会釈をして出ていくと、保健室に鍵をかけて、ベットに寝かせた。 病院に連れていくか悩んだが、前に犯されそうになった時こいつは大事になることを何よりも嫌がっていたし、熱だけならまずは解熱剤を飲ませて、落ち着かせることが先決だ。 何より、こいつのこんな姿をだれにも見せたくないとも思った。 解熱剤を水で溶いて飲ませると、ベタベタした体を濡れたタオルで拭き取った。 外傷もそこそこ酷く、GW明けに受けていた傷も広がっていた。 予備のジャージを着せて、冷却シートシートを貼り毛布をかけ様子を見てると、解熱剤が効いたのか幾分か顔色が落ち着いてきた。 ひと段落ついたことにホッと息をつくと、さっきあいつらから取った携帯に目を向けた。 見ない方が、いいよな。 でも、俺が見なかったら当然確認するのはアンジェリーな訳で。 アンジェリーがどんな思いで確認して消すのかと思ったら少し胸が絞められた。 一度深くため息をついて、携帯のスライドロックをあける。 セキュリティはかけられておらず、フォルダの一番上にそれらしいムービーがすぐに見付かった。 再生ボタンを押すと、アンジェリーがネクタイで腕を縛られているところからだった。 そこから、恐らく媚薬を飲まされて、今まで見たこともないような顔で耐えるアンジェリーが好き勝手される姿が映っていた。 最後までアンジェリーが涙を流すことは無かったけど、あんな辛そうな声、初めて聞いた。 イライラする。あいつらにも、すぐに駆け付けなかった自分自身にも。 何も頼らない、アンジェリーにも。

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