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優しい手
時計が8時を周ってもまだ意識が戻ることがなく、仕方なく一旦俺の家につれて帰ろうと抱えた。
「ん………」
抱き上げると、苦しそうに顔をしかめ、うっすらと目を開けた。
「も……や、めて…………」
起きたかと思ったが、目はどこを見てるかわからなく虚ろでぐったりと俺に寄りかかったままだった。
夢の中でも、あの最悪な行為は続いてるのだろうか。
そう思うと、アンジェリーを抱える手に力が籠る。
「もう大丈夫だから」
聞こえるはずはないけど、ほぼ無意識にそう返していた。
「……せんせ……………」
アンジェリーが泣きそうな声で俺を呼ぶ。
「なんだよ」
穏やかに返すと、アンジェリーの閉じられた瞼から一筋の涙が伝った。
あんな行為の最中は泣かなかったくせに、意識を失って初めて泣く。
「………っめんなさ………ご、めんなさ………」
繰り返し謝るアンジェリーが痛々しい。
何に対して謝ってるんだよ。
俺はもう返事をせずに、再び眠りに落ちたこいつを後部座席にのせて運転した。
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