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小さな体
あとは体だけなんだけど、少しためらう。
さっさと洗って終わらしてやりたいけど、こいつは嫌だろう。
スウェット着せたまま入らせたから、直接どこがみえるとかでもないし、倒れて頭をぶつけないように見てるだけでいいんだけど。
─────オレ、汚いから。
か細くそう言ったさっきの台詞がなんだなカンにさわって、ボディソープを手のひらに多目にとった。
ぼーっと俺に背中を向けていたアンジェリーの濡れたスウェットの中に手をしのばせ、後ろから腹部に触れた。
「や………っなに……?」
ビクッと振り返ったアンジェリーは少し怯えたように前に逃げようとするのを抱き締める形で囲む。
「せんせ…!体はオレ自分で洗えるから!」
「静かにしてろ」
「やだっ。オレに触らないで。汚いから!お願い……」
泣きそうな声でそう訴えるアンジェリーにイライラする。
俺を好きなくせに、触られたくないってなんだよそれ。
今更ながらに、こいつを汚した三人にもまた腹が立ってくる。好き勝手触りやがって。
「アンジェリー、暴れんな」
「だ、だって……」
目に涙まで浮かべて、抵抗する力はあまりに弱い。そりゃ、これだけ細い体してたらなと思う。
「お前は俺が好きなんだろ」
弱ってるアンジェリーの体を冷やすわけにはいかないから、出したままのシャワーが俺にもかかる。
それすら大して気にならず後ろから包むと、アンジェリーは震えながら小さく頷いた。
「だったら、あんなやつらに触られたことなんて忘れろ。俺が上書きしてやるよ」
「そんな優しさ、要らない………っ」
優しさ?
そんなものじゃないだろ、ばか。
どれだけこいつは俺を美化するんだ。
せんせーは優しいね。とか、傷付いてきたんだねとか、愛される人だよ。とか、しまいには自分は汚いから俺には触られたくないって。
本当に美化しすぎだろ。
俺はムカついてるだけだ。他のだれかが、こいつを触ったことに対して。
「アンジェリー、次自分のこと汚いとか言ったら怒るぞ」
「な、なにそれ………んっ」
シャワーの勢いはスエットに遮られて、肌はちょうどよく泡立つ。
手を滑らせると、アンジェリーが小さく震えた。
「怖いか?」
まぁ、そう聞いたところで、こいつが素直に怖いと言うとは思えないけど。
「せんせ、は……気持ち悪くないの?」
「次言ったら怒るって言ったよな?」
「んぁ…っ」
きゅっと胸の突起を摘まむと、甘い声が漏れ、慌てたように口を押さえていた。
「せんせ、だめ………っ」
「じっとしてろ。あいつらに触られたとこ全部洗ってやるから」
腹、胸、背中、腰、順番に手のひらで優しく洗うと、たまにぴくぴく反応しながら必死に声を押さえるのがかわいくて、つい意地悪をしてみたくなるが、病人を長く水につけているわけにもいかない。
太ももにするりと手を滑らせると、小さな手に止められた。
「せんせーの服、つかんでていい…?」
まるで親に怒られてる時の子供のように不安そうに見上げるアンジェリーに笑いが漏れる。
「どうぞ?」
小さな体を抱き上げて、俺に対面に向かせ膝に座らせると、顔を赤くして躊躇いがちに手を伸ばしてきた。
「服、濡れるよ……」
「もうとっくに濡れてる」
「せんせ、好き」
「はいはい」
シャワーでよくわからないけど、多分泣いてるんだと思う。
アンジェリーは顔を隠すように俺の肩を回した。
ボディソープを足して、シルクのようにきめ細かい肌に再び手を滑らせる。
太ももの内側を洗うと、耳元で小さく漏らす声や、必死にしがみついてくる細い腕がかわいくて、年甲斐もなく興奮する。
「アンジェリー、力抜けよ。指入れるぞ」
後孔に指を這わせと、肩でふるふると頭を降る。
「だ、だめ。せんせーはそんなとこさわっちゃだめ…っ」
「中にも出されたんだろ。流さないとあとで辛いぞ」
「でも、だめ………っ」
「それに、今の言い方気に食わないからな。おしおき」
「や…っ」
指を一本ツプと入れると、びくんとアンジェリーが俺の膝の上で反る。
俺から離れようと肩を押して来るが、空いている片手で簡単に腕の中に閉じ込めれてしまう。
「ん………っ………ふぁ……」
指を動かすと、卑猥な水音が浴室に響きアンジェリーから甘い声が漏れる。
「もう終わるから」
声を押さえようと抵抗をやめて肩に顔を埋めてしがみついてくる頭を撫でると、指を二本に増やし、さらに激しく動かしほぐしていく。
「やああ…っやだぁ…!せんせ…からだ、へん……っ」
普段は飄々としてるくせに、本当にいい声で喘ぐ。
「洗ってるだけなんだから、我慢しろ」
わかっていてやってるけど、つい、意地悪をしてしまう。
激しくするほど、一生懸命俺にしがみついてくる姿が可愛くて。
「も……むり………せんせーに触られるの、へん……ったすけて」
わかってて言ってるのかと思う。
どんな状況になっても助けてなんて絶対言わないくせに。
「気持ちいいんだろ?」
意地悪だと自分でも思う。少し体を離してアンジェリーの顔を見ると、いつもの余裕なんてまるでなさそうに口を押さえて首を横にふる。
「うそつけ」
「顔、見ないで………っ…ぎゅ、して」
もう一度引っ付いてこようとするアンジェリーを止め、代わりに指を動かす。
「んん……っ」
「本当のこと言えよ。楽にしてやるから」
意地悪く笑えば、アンジェリーは切羽詰まった様子で俺を見上げる。
それからようやく涙声で「きもちい」と小さく漏らした。
「よくできました」
アンジェリーの体を片手で抱き締めると、求めるように手を回される。
「ほんと、かわいい……」
「え……………?」
思わず漏れた言葉が聞こえたのか、聞き返されたのが少し恥ずかしく、指を中で激しく動かした。
「やぁああああっ」
高く声をあげると、俺のシャツをぎゅっと掴み、アンジェリーはこてんと力なく項垂れた。
「ご、ごめ……なさ………」
呼吸も途切れ途切れに消え入りそうな声でアンジェリーが呟く。
もしかして、イった?
さりげなくアンジェリーの腹部を撫でる。
あ、やべ、正解。
一気に素面に戻り、罪悪感が込み上げる。
「もう終わるからな」
背中をポンポンと撫でてやり、シャワーを手に取ると、指二本で後孔を広げそこにあてた。
「んん……っ」
俺にしがみついて耐える小さい少年を前に、なおさら罪悪感が増す。
多分、中をある程度流したら、もう一度アンジェリーの体全体をスエットを少しめくって流し、シャワーを止めた。
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