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俺のもの
「…………っせぇな」
ちょっと揺すったくらいじゃ、不機嫌そうに眉をピクっと動かしただけで全然起きない。
うるせぇな、じゃないし。こっちは心臓が壊れそうなのに。
今度は両手で強めに揺する。
「せんせー。お願いだからおきてよー」
「……なに」
やっとせんせーが瞼をあけた。
「おきたー?」
眠そうな目と視線が合い、懇願するように覗き混むと、一瞬目が見開いたけれど、すぐにまた眠たそうな表情にもどった。
「あー…………体調はどうだ?」
眠たそうな雰囲気はあるけど穏やかな表情で、髪をさらっと撫でられ顔が一気に熱くなる。
寝起きから顔がいいってなに。
「………あの、服、着たい」
たったこれだけで、息がつまりそうになるなんて、昨日の熱のせいだ。
恥ずかしくて目も合わせられず、質問をつい無視してしまう。
せんせーは気にした様子もなく、ふっと笑いオレから体を離した。
オレを包んでいた暖かい温もりがなくなり、ほっとため息を付にながらも、寂しいような気もして、考えを振り払った。
「お前の服もう乾いてるだろうからとってくる」
ああ、そうだ。地学室で服を脱がされて、多分せんせーが見付けたときは乱れたシャツが一枚だけとかそんなひどい有り様だったはず。
散乱していた服を拾ってくれたのかな。
熱が下がって、スッキリした頭で羞恥心はあっても、先の事を考えなきゃと思えるようになっていた。
「ほら、服乾いてた」
戻ってきたせんせーに服を手渡される。
色々話さなきゃと、今思ったばかりなのにやっぱり対面すると、恥ずかしい。
「ありがとー。服着たいから、あの………」
部屋から出てってほしい言えず言葉につまる。意識してるのがバレバレで気まずい気持ちになる。
「はぁ?昨日風呂にいれてやったし、裸のお前を拭いてやったのに何を今さら」
「あーもう!昨日のことは思い出させないで!」
めんどくさそうにため息を付ながら恥ずかしいことを言う。オレが嫌だってわかってやってるんだあのドSは。
「はいはい。風呂入ってくるから、それまでに着替えとけよ」
「…ありがと」
でも、ちゃんと部屋からは出ていってくれて、ほっと息をついて服を着た。
ズボンもシャツもアイロンを当ててないから、しわくちゃだけど、せんせーの柔軟剤の匂いがついていて、まるでせんせーの腕の中にいるような感覚がして、安心するような、ドキドキするような。
…………オレらしくもない。
せんせーが戻ったら、とにかく笑っていつも通りの関係に戻れるように明るく、軽い感じで昨日の事を過去のことにしてしまおう。
このまま気まずくなって、そばにもいれなくなるなんて、絶対いやだ。
『……………よしっ』
もう二度とせんせーの前で弱いところは見せないと、そう決意して、寝室を後にした。
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