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俺のもの

両手を片手に拘束されたまま、体を緩く撫でられ、動く度にいちいち反応する体が恨めしかった。 その手が、ズボンに差し掛かり「ひっ」と声が漏れてしまった。 「…………なに?随分怯えた声だったみたいだけど」 「お、びえてなんか……な……」 「ああ、そう」 「ぁう………っ」 自身をきゅっと握られ、ぎゅっと目をつぶって、溜めていた涙が頬を伝った。 ……………こわい こわい…….こわい……! 父親とする行為は、痛みだけのものだった。 そんなものとは全然違う反応して、自分の体じゃないみたい。 昨日みたいに媚薬を盛られたわけでもないのに。 せんせーの感情が読めない。 どう思われながらこうされてるのかわからなくてこわかった。 あなたの目に、今のオレはどれほど薄汚く映っているのだろうか。 「せ、んせ…………も、やめ………」 「なんで?」 「…………っわい………こ、わい………」 怖いと口にした瞬間、拘束された手が解放され、体が暖かく包まれた。 「…………お前さぁ、こんなことやらせんなよ」 顔は見えないけど、ため息を大きく吐きながら耳元で言ったせんせーの声がいつものように暖かくて、涙が一気に溢れた。 「リチェールは汚くねぇし、無理矢理されるのも慣れてなんかないだろ、ばか」 「…………ごめんなさい………っ」 子供をあやすように撫でてくれくれた背中からどんどん体温を取り戻していくような感じがする。 オレが母親の名前を呼ばれながら犯されたって言ったから、気を使ってリチェールって呼んでくれてるんだろう。 同情だと分かっているのに、今はそれが心地よかった。 「もういいだろ。無駄な悪あがきはやめて、黙って守られてろ」 「………迷惑、か、けたくて、好きになったわけじゃない…っ」 「わかってる」 どうしてこんな優しい人に、こんなことをさせてしまったんだろう。 オレの狡さも弱さも受け止めて、守ってやると包んでくれる腕の中は悲しいほど温かった。

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