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臨海学校
やばい、と思った瞬間。
グイっと体が持ち上げられ、視界が広がった。
「…………っけほ!!けほけほ………っはぁ…」
やっとの思いで呼吸をすると、せんせーが見たこともない顔でオレを掴んでいた。
「馬鹿かお前は!!!」
あまりの迫力にびくっと体がこわばった。
「溺れてる時くらい声あげて助けを呼べ!!!」
「……………ご、ごめんなさ…………」
初めて見る剣幕に反射的に謝ると、ぎゅっと抱き寄せられた。
「さ、さっきのひとは…………?」
「一回俺が捕まえて秋元が浮き輪もってやってきたから任せてきた」
あの距離からシンヤよりも先の着くとか、この人前世は魚なの?
本当にこの人は人を救ってばかりだ。
「ほら、戻るぞ。捕まってろ」
オレから体を放して、背中に乗せてくれる。
「せんせー、オレ泳げないんだよね」
「知ってるよ。お前もうこんな沖にまでくるの禁止な。一生」
「あはは。うん。そうする」
まるで、あの部屋での会話みたい。
1ヶ月ぶりの会話なのに、距離が一気に縮まったあの日から、せんせーとの遠くなっていたと思っていたのに。
今だけはオレがカナヅチだからと自分自身に言い訳をして、せんせーの広い背中にぎゅっと抱きついた。
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