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臨海学校
千side
リチェールが保健室に来なくなって一ヶ月が過ぎた。
最初の一週間はテスト期間だし、あんなことの後じゃ気まずいんだろうと気に留めなかった。
でも時間が過ぎるほど段々気になっていって、廊下ですれ違っても相変わらず何を考えてるのかわからないような笑顔で挨拶するだけだった。
少しいらっとする。
ずけずけと好きだのなんだのほざいて払っても払っても引っ付いて来てたはずなのに。
こっちが一歩近付いたら三歩さがるやつ。
どう扱っていいのかわからない。
愛だの恋だのバカらしいと思っていたのにいつのまにかすっかりリチェールの好意になれてしまっていた。
気持ちに答えてはやれないけど、だれにも頼らないこいつを守ってやりたいと思ってしまう。
まぁ、答えるもなにも、好きだと言われるだけで、付き合ってと言われたことは一度もないんだけど。
もやもやとしたわけのわからない気持ちを抱いたまま、二年生の臨海学校が始まった。
学年一の問題児、折山を俺は付きっきりで見なきゃいけないんだけど、目は自然とブロンドの髪を探していた。
幼馴染みの佐久本に連れられて、めんどくさそうにしながらも着ていたパーカーを脱いで海に向かおうとするリチェールを体が勝手に呼び止めていた。
白人は紫外線に弱いんだから、なんて適当な理由をつけてTシャツを着せる。
リチェールのここにいる誰よりも白い肌が他のやつに見られることがいやだった。
リチェールが着ていたノースリーブのパーカーですら、いらっとしたのにさらに脱ぐなんてふざけるなと言いたいくらいの気持ちだった。
こんなことでイライラするなんて本当にどうかしてる。
「月城先生………どこいってたの?」
テントに戻ると拗ねたような顔で折山が近付いてきた。
顔には出さないけど内心ため息をつく。
あの事件以来折山は我が儘になった気がする。
「他の生徒の様子見てきた」
「それって………ルリ君?」
まただ。折山はあの事件以来リチェールと俺が関わるのが嫌らしく少し離れただけで機嫌が悪くなる。
めんどくさいとは思わない。
仕事だから。
正直、厄介だなとは思う。
これが言い寄ってくる女なら、とことん無視するけど。
どうやったら折山がクラスに復帰して卒業できるかということが第一優先だ。
「お前もリチェールと遊んでこれば。あいつお前のこと心配したぞ」
「や、やだ。月城先生の、そば…離れるの怖い…」
相変わらず言葉も、途切れ途切れでクラスに馴染むのは時間がかかるだろう。
その上、なんか俺に依存してるっぽいし。
結局そのあと溺れてるリチェールを助けたきり、折山が体調を崩して付きっきりなまま1日を迎えていた。
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