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臨海学校

「少しは体調よくなったか?」 ぐったりとベットに寝る折山に水を手渡すと力なく首を降られた。 体調を崩した原因は明らかだ。 俺がリチェールを抱えてテントに戻った時、表情が一気に青ざめてうずくまった。 折山ってちょっとメンヘラ要素入ってるだよな。とか思ってしまう。 「最後のイベント、肝試しが始まってるけど、参加しなくていいのか?」 「うん………こわいし。まだ、ちょっと体もキツい…………」 何度か家に帰ることを進めたけど、それは断られた。 それでいて、俺が離れることをひどく拒んだ。 他の教師陣からもよろしく言われてるし、俺自身イベントに出るのはめんどくさいとは思ってたからこうして座ってるだけでいいのは楽だけど。 「で、でも、月城先生と一緒でいいなら、参加、しようかな………」 なんて思った矢先にこれだ。 まるで見透かしたようなタイミングで、折山が不安そうに俺を見上げる。 あほか。体調悪いなら寝てろと、一蹴してやってもいいんだろうけど、こいつにとって高校生活一回しかないイベントだと思うと、そうもいかない。 仕方なく、タバコの火を消して立ち上がった。 「体調悪くなったらすぐ言えよ?」 それに、やっぱり普段から俯き加減の生徒が嬉しそうに頷くのを見ると、素直に可愛いと思う。 集合場所に向かうと、もうすでに何組かの生徒は出発していて、半数の生徒と3人の教師だけだった。 「ああ、折山。参加できそうなのか?」 折山の担任の武田が心配そうに近づいてくると、俺の服の裾をつかんで隠れてしまう。 「………はい。月城先生が、一緒に回ってくれるそうなので………」 「そうか。よかった。月城先生、すみませんが、よろしくお願いします」 担任の教師なら多少は嫌だろう折山の態度を気にしてないように、武田が俺に笑顔で会釈する。 俺も適当に笑ってコースを確認しにその場を離れた。 案内版で道を確認していると、思いの外長い距離にめんどくささが急上昇する。 夜とはいえ暑いし動くのだるい。 「せんせぇー!参加すんのー?」 内心ため息をついていたら近くにいた生徒が嬉しそうに駆け寄ってきた。 「せんせー真面目ですから」 「はは!どの口がいってんだよ!てか参加すんなら俺らの班と参加しよーぜ!」 「おー!いいじゃん!折山と俺ら、何気に同クラだし!」    「他の班は五人なのに俺らの班だけ四人なんだぜ!折山と先生いれてちょうどいいじゃん!」 さっそくその気の四人を尻目に折山は不快そうに眉を寄せる。 でも、俺と二人で山道登るってのもな。 少しずつクラスに馴染むべきだ。 「仕方ねぇな」 肯定の意を口にすると、折山はショックを受けたような顔をしたけど、大丈夫だと言うように頭を軽く撫でた。 「まじで!やったぁ!」 「やべー!早くスタートしたいんだけど!」 折山には悪いけど、素直に高校生らしくはしゃぐ姿は微笑ましい。 高校生つったらこうだよな。 へらへら笑ってるくせに感情を圧し殺し勝ちなあいつがいつかこんな風に無邪気に笑えたらって思うと、また胸が少し締められた。

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