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臨海学校

臨海学校から帰って、家に着くとスマホを片手に、深く深呼吸をつく。 アドレス帳から父親を出し、震える手で電話をかけた。 コール音が響くたび、冷たい手に心臓が握られてるような苦しさが募って、動悸がしてくる。 せんせーは頼れって言ってくれたけどさ、オレはそんなずるいままであなたと向き合いたくない。 ちゃんと、自分で全部精算して、今度こそ正面からあなたに好きだというんだ。 ある程度、予想はしていたけれど、こちらからの電話に親は出ない。 あの人たちは自分に用事がないと連絡を取らないんだ。 通話を切って、すぐメールを作成した。 『もうイギリスには帰らない』 短くて一言だけ書いて送信すると、1分もしないで折り返しの電話がかかってきた。 電話がすぐかかってくることは予想していたのに、どくん、と大きく心臓が跳ねる。 震える手で、通話ボタンを横にフリックした。 『どういうつもりだ。殺されたいのか』 第一声から物騒だな。 声も低くて、殺されるんじゃないかと思うほど乱暴に抱かれた日が鮮明に頭に浮かび、冷や汗が込み上げた。 ……大丈夫。 何回もシュミレーションしたじゃん。 『悪いけど、取引は無効にさせてもらう。オレはもうあんたら夫婦の言いなりにはならない』 『そんなこと通用すると思ってるの?すぐにでもイギリスに連れ戻す。なんなら今すぐ学校に退学の電話してやろうか』 相変わらず、嫌なところを突いてくる。 生徒じゃなくなったら、せんせーがオレを構う義理はなくなる。 それどころか、せんせーとはもう会えなくなるかもしれない。 それでも、いいんだ。 オレはそういうの全部のなくして、ちゃんと精算して、せんせーが素直な気持ちや態度を出せる状態で胸を張って気持ちを伝えるんだから。 可哀想だから助けてあげなきゃとか、生徒だから守ってあげなきゃなんて感情もういらない。 オレは守って欲しくて好きになったわけじゃない。

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