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エゴイズム

───────── 今日は平日と言うこともあり、バイトリーダーの光邦ともう一人の遅番のバイト以外早く上がれることになった。 忙しいピークの時間も過ぎたし、ほっと息をついて休憩室にむかった。 ドアを開けると、10時にあがったはずのルリがもう一時間もたってるのに、一人椅子に座って勉強をしていた。 そういえば、こいつって大学だっけ、専門だっけ。 「ルリ、まだいたの?」 「あ、アキちゃんおつかれー」 顔をあげてへにゃっと柔らかく笑うルリを見ると、少し胸が暖かくなる。 「居候させてくれてる人がこの辺で職場の人と飲んでるんだけど、お酒飲まないから終わり次第迎えに来てくれるんだって。待っとけって言われてるのー」 「ああ、そう。あとどれくらいで来るって?」 ルリが「んー」と勉強道具を片付けて、スマホを開く。 「まだわかんないって。 なんか、ひとりすごく酒癖の悪い人がいて、捕まってるってー。あと一時間くらいかかるのかなー」 「へぇ、かなり待つね。 近くのファミレス行ってご飯でも食べとく?この間のラーメン断っちゃったしおごるよ」 「いいのー!?いくー!でも割り勘ね!」 ぱっと笑顔を輝かしてはしゃぐ姿は本当に可愛いと思う。 こういう子がみんなから愛されるんだ。 「気を使ってない?アキちゃんこのあと予定とかなかった?」 「ないない。俺も同居人が今日は多分帰らないから丁度よかったよ」 私服に着替えてドアに向かえば、パタパタとルリが嬉しそうについてくる。 スマホを確認したら、着信が三件ぐらい来ていたけど、本来ならこの時間は、まだバイト中だからかけ直さないで、再びポケットに突っ込んだ。 職場のすぐ近くのファミレスに入ると、手早くメニューを決めた。 「アキちゃん、ドリンク持ってくるよ。なにがいいー?」 「いいの?じゃ、アイスティー」 「はぁーい」 ルリは本当によく気が利く。 今だってさりげなくソファ側の席を譲られたし、メニューを俺に向けて渡したり。 それで、なんで付き合った相手がいい人すきでて自分なんかがもったいないと思うんだろう。 「はい。ついでにおしぼりももってきたよー」 「ありがと。お前いい嫁になるよ」 「えー?いい旦那でしょー」 「ルリが好きな人男の人なんでしょ。なら、お前どうみても女側じゃん」 常にへらへらしていたルリの笑顔がぴたっと凍り付く。 聞こえてたっつの。 聞かなかったフリをしてもいいけど、何となく話を聞いてみたくてバラしてみる。 「もしかして、今日の聞かれてたのー?」 「まぁ、あそこ壁薄いから」 「うぁー、迂闊だったぁー」 頬を少し赤くして、テーブルに肘をついて頭を抱えた。 それでも特に気にしてないように、ははって笑ってストローを指で遊んで、氷をカランと鳴らす。 「まぁ、いいんじゃないの。 相手が男だろうと、いい人なんでしょ。ルリも普通にいい子じゃん」 「そんなことないよー。本当迷惑かけてばっかだもん。 アキちゃんは付き合ってる人いないの?」 話をそらしたな。 まぁ話したくないなら別にいいけど。 「一応いるよ」 「えっ」 何故かルリがショックを受けたような声をあげる。 「さっきいってた同居してるって人?」 「そうそう。ちなみに俺の相手も男」 「そうなんだー」 男ってことには驚かないくせに。 こいつのびっくり基準なんなの。

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