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根比べ

千side 『夜分遅くに申し訳ありません。 ル………リチェール君のバイト仲間の高木といいます。月城さんの携帯電話でお間違いないですか?』 話された内容は、リチェールがまた厄介事に首を突っ込んで、今回はナイフが当たったというものだった。 しかも、相手を庇ってそのまま警察が来る前に歩いて出ていったとか。 本当にあった話かよと言いたくなるような内容だったけれど、電話の向こうで聞こえるサイレンの音がそれが本当の事だと嫌でも教えてくる。 詳しい内容は明日会って聞くことになり、とにかくリチェールの家に向かった。 問い詰めても誤魔化そうとするリチェールに腹が立って、喋るのをやめた。 病院に連れていって、帰って来たけどそのまま落ち着いて話を聞く気にはなれずリチェールが泣きそうなのはわかったけど、少しは反省しろという意味を込めてそのまま寝室に行った。 怪我してるし、疲れたら自分でベットに来るだろ。 …………いや、あいつは来ないな。 呼んでやろうかとも思ったけど、今回のことはそう簡単に許してやれる気になれなかった。 一時間くらいして水を飲もうと寝室を出ると、鎮痛剤が効いたのかリチェールがソファに座ったまま寝ていた。 膝を抱えてるから、伸ばした体制は傷が痛むのかもしれない。 起こさないようにそっとその体を抱き上げて、寝室のベットに寝かせた。 一瞬、顔を曇らせたけど、すぐにスースーと寝息が聞こえる。 今日はよっぽど疲れたんだろう。 目元は少し赤く腫れていて、やっぱり泣いてしまっていたんだと親指でそのあとを撫でた。 泣くなら俺の腕の中で泣けばいい。 俺が機嫌悪かったとしても、呼ばれなくても飛び込んできたら泣き止むまで撫でてやるのに。 ちゃんとリチェールから俺に頼る日は来るのだろうか。 さすがに刺されたとか、犯されたとか、もう沢山だ。

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