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嫉妬

いったばかりでつらいのはわかるけど、ついいじわる心でそこを口で遊ぶ。 「やっやだっあ………っあぁん!せ、せんさ………っやめてぇ……!」 「だーめ」 「も………っいったからぁ……!」   相変わらずリチェールの力は弱くなんの意味も持たない。 けれど、リチェールの声が本当に少し怖そうで、やめて抱き締めると、ぐずぐず泣きながら俺の胸にすがり付いてくる。 「怖かったか?」 頭を撫でると、ふるふると緩く首を降った。 「千さんの顔、見えないから………っ千さんじゃない人としてるみたいでやだ」 「大丈夫。俺だよ、リチェール」 「ん……」 苛めたかったり、甘やかしたかったり、リチェールには色んな感情が沸いてくる。 「千さん……」 とろんとした目で甘えるようにリチェールが俺を見上げる。 「オレばっかり気持ちよくなってたらやだ。オレも千さんの舐めていい?」 最近のリチェールはやたらと積極的だ。 そのくせ相変わらず恥ずかしがり屋で自分で言ったくせにもう真っ赤。 怖いくせに、健気なやつ。 「どうぞ?」 その可愛さにうすく笑ってそういうと、リチェールはなれない手つきで俺のベルトに手をかけた。 「ん……」  角度を持ち始めた俺のものをリチェールの小さな赤い舌が先端を這う。 躊躇いながらチワワみたいにチロチロなめる姿が可愛くて、頭を撫でた。 「んん、ん……」 小さな口に俺のは入りきらず、少し苦しそうにする表情にまた固くなるのがわかった。 こいつの顔、エロすぎだろ。 「リチェール、もういい」 「………ごめ、下手だった……?」 悲しそうにリチェールが俺を見上げる。 まぁ、下手と言えばそうだけど、本当に今まで無理矢理突っ込まれるばかりで自分からしてこなかったんだと、分かりやすく伝えられたようで嬉しくもあった。 「もう、いれるぞ」 「う。………ん、………オレも、早く千さんの、ほしい………」 「うそつけ、びびってるくせに」 「びびってないもん」 そんなことないってリチェールは言うけど、いれるときやっぱり少し怖そうで、それでも必死に受け入れようと身を震わせる姿がいじらしく思えた。 「んっ………あ、ぁんっ……せん……っはぁ……せんさん……っ」 「…………っ」 何度も何度も俺の存在を確かめるように泣きそうな顔で名前を読んで、リチェールは気を失うまで苦しそうに、やめないで、続けて、と言った。 倒れた後に襲われて、その後にまたセックスをするなんて、リチェールの体が心配だったけど、俺も止まらなかった。 気を失うことを望んだようにリチェールはストンと、深い眠りについた。 濡れたタオルでベタベタにしてしまった体を拭くと、抱き上げてベットに運んだ。 泣き虫やくせに、自分の痛みにはひどく鈍感で、へらへらと笑って誤魔化す不器用なやつ。 これだけ優しかったら生きにくくもあるだろうに。 「守ってやれなくて、ごめんな」 白い頬を撫でると、一言呟きシャワーに向かった。 _________ 風呂から上がると、テーブルに起きっぱなしだったリチェールの携帯が鳴っていた。 画面には秋元からの着信を表示していて小さく舌打ちをした。 迷うことなく手に取り通話を繋いだ。 「ルリ!?今どこ!?ごめん俺ひどいことし───」 「反省はしてるんだな」 「…………だれですか」 リチェールじゃないと気付いて、警戒するように声が低くなった。 「お前さ、うちのが可愛いからってなにがっついてんの」 「……っ!うるさい!お前誰だよ!」 くすくす笑うと、秋元がカッとしたように口調を荒げた。 リチェールは友達に戻りたいと思ってるんだろう。 「リチェールは、俺のだ」 そんなこと、許さなさい。 どこに危険だとわかってるやつに大切なものをあずけるやつがいるんだっての。 「二度と近づくな」 声を低くして脅すように言うと、電話の向こうで息を飲むのが聞こえた。 「…………俺は、ただルリが好きだっただけだ」 辛そうに一言呟いて、通話が切れた。 なるほど、いいやつ、ね。 この間の暁の元カレのことといい、秋元といい、こいつらのいい人の基準は弱いやつのことを言ってるのかと思えてくる。 リチェールからしたら俺だって優しくていい人なんだからあいつの人を見る目は当てにならない。 傷つけられても、そいつの弱さやずるさを包むこむ優しさはリチェールのいいところだと思うけど。 せめてその他に向ける優しさの一割でも自分に向けてくれたら、俺も安心できるのに。 「そんなんじゃ、お前生きづらいだろ」 小さな頬を撫でると、猫のように擦り寄ってくる寝顔に小さく唇を落とした。

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