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気持ちの行方
次の日、俺は雄一と敦と正樹と四人でボーリングに来ていた。
気分は晴れないけど、家に居ても嫌な感情に呑まれそうでなんでもいいから気を紛らわせたかった。
ルリ以外のいつものメンバー。
本当はここにいつもルリがいたのにと思うとツキンと胸が痛んだ。
もう抜け駆けして会うことも出来ないんだ。
今さらながらに取り返しのないことをしたと痛感させられる。
「てかさぁ、誰も言わないから言うけど、雄一いい加減ルリと仲直りしろよ。俺、ルリとも遊びたいんだけど」
正樹が突然言った言葉に雄一がびくっと反応する。
たぶん、俺も今反応したの顔に出ていただろう。
「あ、わかる。やっぱルリがいるのといないのじゃ違うよな!華があるっていうかさ」
「だよな。俺らの中で癒し担当だからな」
敦も便乗して頷きながら、早速ルリに電話しようと携帯を取り出していた。
まずい。
今呼ばれたら、気まずいにも程がある。
止めろよ雄一と、気持ちを込めて雄一を見る。
「別に呼べばいいだろ」
雄一も仲直りしたかったらしく、ぶっきらぼうに答える。
なんだこいつ。自分からはなにも行動起こさないで他人任せかよ。
正直雄一のこう言うところは少し苦手だった。
「ル、ルリ呼ぶのはやめよう!」
つい、今にも電話しそうな敦の手を掴んでしまった。
全員がびっくりしたように俺を見る。
「なんだよ、信也もルリに会いたがってたじゃん」
まずい。どうにか誤魔化さないと。
「実は今日先にルリをこっそり誘おうとしたら風邪だっていってたからさ」
咄嗟に嘘を言い、じゃあ仕方ないって携帯をしまう敦に、内心ほっと息をついた。
いつかはバレるかもしれないけど、今は、まだ隠したかった。
いや、ルリはきっと昨日のことを自分から誰かにバラしたりはしない。
きっとなかったことにできるはずだ。
それこそ、ルリがイギリスからやってくる前の状況に戻ったと思えばいい。
「なにそれ。ルリが体調悪いの素直に言うとは思えないんだけど」
雄一が疑うように眉を潜め、俺を見る。
またぎくっと体が一瞬固まる。
「さぁ?なんか予定あったのかな?雄一とまだ会いたくなかったんじゃない」
「ルリは俺と仲直りしたいって思ってるに決まってるだろ。どれだけの付き合いだと思ってんだよ」
言葉にトゲがある雄一に言葉にムッとする。
どれだけの付き合いって?
なに、こいつもルリが好きなの。
もしかしたら、俺と同じようなことをしたのかもしれない。
幼馴染みだからって優越感に浸ってんのか知らないけど。
でもそれ、無駄だから。
ハッと、皮肉な笑いが出る。
「ルリのことなら、無駄だよ雄一。あいつ月城とデキてるし」
想像した通り、雄一が傷付いたような顔になる。
自分は特別だって思ってたんだろ?
わかるよ、俺もなりたかった。
その苛立ちをぶつけるように雄一に当たる。
「………なんで、そう思うわけ」
「ルリに手ぇ出して月城に牽制されたから。雄一に入る隙間はない」
そして、俺も。
入る隙間なんて最初っから無かったんだ。
「おいおい、手出してってなに。お前、ルリになにしたの」
敦が引いたような笑いで俺を見る。
ああ、もう、いいや。言っちゃっても。
どうせ雄一も同じでしょ。
なんかもう、どうにでもなれってさえ思えた。
「熱中症で倒れたところを家に連れ込んで襲ったんだよ。
どうしても、気持ちが押さえられなかった」
「はぁっ!?おま……」
「信也、お前なぁ!」
敦と正樹がほぼ同時に声を荒げた瞬間、ガツンと頭に衝撃が走って、床に落ちた。
左頬がじんじんして、押さえながら見上げると雄一が泣きそうな顔で怒っていた。
「お前頭おかしいんじゃねぇの!?」
一言そう罵声を浴びせると、バックをつかんで走って、出ていってしまった。
雄一を追おうとした正樹を敦が止める。
左頬の痛みに、少し冷静になって深くため息をついてうつむいた。
「………あー、まぁ、お前が悪いわな」
「てか、らしくないだろ。どうしたよ信也。ストレスたまってたんか」
今さらだけど、俺って本当に最低なことをしたんだと、ルリのボロボロの姿を思い出して涙が溢れた。
それでも、
「ずっと、ルリが好きだった……っ」
情けなく泣きながら話す俺の話を二人は俺が泣き止むまで聞いてくれた。
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